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Forest Instructor Association of Japan

「明治伐木運材図絵」を通して明治の山仕事を読む6

執筆:羽鳥孝明氏(東京5-0145)

「明治伐木運材図絵」を通して

 
図1 デーモチ引の図
 
図2 詞書き
長いものは山から里まで肩で曳き出すのである。之(これ)をデーモチ引きと云う。
万力と云う輪の付いた金を打ち込みそれに縄をむすんでひくものである。

  
 画の情景を先に見ておきましょう。木の葉がないので晩秋か冬かと思われます。子供が二人歩いていて、犬がいます。子供は駕籠を担いでいるので、杣の画でみたような、木っ端を拾いに行くのでしょうか。右の上に畑のようなところに人がいます。この場面は里から近いところではないかと思われます。この作業はあまり里から離れていない作業ではないのかと想像ができます。

 詞書きからだと、「肩で曳くもの」がデーモチ引きで、その時に万力を使用すると解釈するのでしょう。
 材の搬出で長い距離を肩で担ぐというのは現実的ではありません。しかし、肩で担ぐ作業がないわけではありません。距離がないところを数本降ろす時などは、そのような作業をすることもあります。また、下に落ちた木などを上に上げなければならないときに、ひょいと持ち上げます。私たちが二人がかりで持ち上げていた丸太を、八十才の親父さんが「なにやってんだよ!」とひょいと持ち上げたのを見たときは、びっくりしました。どこにそのような力・技があるのかと。
画の様な作業をデーモチ引きと云いますが、牛馬に引かせる場合は「土ずり(どずり)」などともいいます。万力は鼻環(はなかん)ともいいます。福島の方では万力というようです。同じ群馬の大間々では「マンリキ・ハナグリ」といいます。西多摩地域でも「カン・トチ」とか地域で違っています。
 鼻環といってきましたが、私たちが知っている引き方とちょっとこの画は違っています。二人で引いたり、三人で引いたりしています。大木なのでこのようにしたのかもしれません。普通は一人で引くものだと思っていたので、ちょっと説明がうまくできません。
 西多摩では一人で引くのが一般的です。間伐材程度なら数本いっぺんに曳き出します。
四から五本は曳き出します。丸太の木口の真ん中より少し上にトチを打ち込みます。カナズチ等持っていませんので、手斧でたたき入れます。真ん中でないのが、ポイントですが、気にしないで真ん中を打つという人もいます。丸太は通直(まっすぐ)ではなく、少し丸みがあります。丸くなっている方を下に、へこんでいる方を上にして、トチを打つようにします。先(木口)が上に上がるようにするためです。下ですと土に引っかかってしまいます。末口と元口でしたら、末口に打ちます。道が狭まっているところを通るときに、末口が通ればあとは付いていくので、よいのです。
 トチの曳いていく道は、はじめに造っておきます。人が歩いて上がる道を利用するときは、邪魔な切り株を切りそろえておいたり、谷川に落ちそうな道は杭を打って落ちないようにしたりします。途中の道がぬかるんでいたりしたら、そこに簡単な修羅をかけたり、丸太を並べておいたりします。「トチミチ」といいます。(下の写真参照)
 トチで材を曳きながら降りていくのですが、材に追いつかれて足に当たることはよくあります。そんなことはないよと云いながら、「たまにな」と必ず話が出てきます。結構簡単そうですが、どうでしょうか。人が何回か曳き出したあとは、滑りがよいので、「結構楽だ」とも聞きました。
 こんなこともあったそうです。冬の夜2時ぐらいに道に水をまいておくそうです。コンクリートの道路でほぼまっすぐに降りられる1kmぐらいのところです。朝早く、何人かで繰り出して、その道を、トチで丸太を曳き出したそうです。100mも走れないから、途中で30mか40mぐらいで交代して下まで落とすそうです。交代したら上に行って又同じ作業を繰り返す、「追い継ぎ」という作業と云いました。道は凍っているのでよく滑るので、楽だったと云っていましたが、自分は滑らなかったのでしょうか。想像するだけで怖い作業ではないでしょうか。 


付録

 
 馬で曳き出すやり方は西多摩では昭和の終わりまでやっていたそうです。馬主がトラックで馬を土場まで運んできます。馬主が伐採現場まで馬を連れて行きます。伐採夫が馬の後ろにトチを打ち付けた丸太を何本(一馬力分)もつけます。馬主が合図をすると馬は引き出し歩きます。丸太が斜面を滑り落ちて、馬に追いつきそうになると当たっては大変だと駈けだしていくそうです。先に降りても馬は解っているので土場で止まって待っているそうです。伐採夫は馬の通る道の蔓を切ったり、邪魔な木をどかしたり通りやすくしてやるだけで見ていればいいそうです。

   写真はトチミチです。修羅の平らな形をしています。つなぎの所は段差があっても、走りすぎるのに支障がなければ大丈夫です。トチで引出す材はその上を跳ね落ちますが、走るのに支障がないようです。つなぎ目の後ろの方は修羅のようにそろえる必要はありません。材はその先に落ちていきますので。

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