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Forest Instructor Association of Japan

「明治伐木運材図絵」を通して明治の山仕事を読む7

執筆:羽鳥孝明氏(東京5-0145)

「明治伐木運材図絵」を通して

 
図1 牛搬送の図
 
図2 詞書き
牛方とて荷物はこび専門者がある。牛は力もあり岩坂を注意深く歩くので、狭い山道みちには適している。
伐採したら、植樹することを忘れない。

  
 「伐採したら、植樹することを忘れない」というのは今の人には耳が痛いかもしれません。この木は杉や檜なのでしょうか。元禄時代に書かれた「農業全書」にはすでに杉の種まきから育苗の方法が書かれています。檜に関してはさし木でとあります。古くから苗作りはやられていたのでしょうが、自分の所で育てたのか、苗屋から買ってきたのかは解りません。右側に赤い服を着た人が鍬をもっています。女性でしょうか。子供でしょうか。植樹をしています。鍬を使って植えているのでしょう。植樹は男の人だけの作業でなかったのでしょう。山の仕事というと男の仕事というイメージがあるが、「女性も子供も、できる仕事を積極的に手伝っていた」というのが、作者には心に残ったのでこの画になったのではないでしょうか。外の画にも子供がよく出てきています。大人も子供もみんなが働いていたということです。

 さて牛が荷物を運んでいますが、馬の話は聞いたのですが、ここの作業については解りません。馬ですと一駄は
  角材 十三尺×四寸角    六本
     十三尺×3.5寸角  八本
  貫板 十二尺×4寸×1寸  四束(一束八丁)
だったそうです。この画に描かれているのは製材品の角材です。前回のようなデーモチでは材が傷つきますから、この方が丁寧に運べます。売値も高くできます。

付録

 
 今回はよく解らないことなので、木挽きの話の付け足しをさせていただきます。
 
 木挽きに関しては野州・越後から雇われてやってきた作業夫が、地元の半農の作業員に教えて、そこから専門の木挽きが地元に育っていきました。その雇われた木挽きとは別に渡り職人の木挽きがいました。あの地この地と渡り歩いて仕事をもらう仕事師です。彼らのことを「西行ぶち」といいます。俗に「西行さん」とよくいわれています。渡り職人だから地元からは馬鹿にされて、西多摩では「西行乞食」(注)と隠れて云っています。
 
 西行さんは厘場に来ると、木くずのあるところから裸足になり、鋸は遠くにおいて置き、
いざりながら進んでウラ厘の取り次ぎをおねがいして、元厘に「手前生国は……」と仁義を切ります。仕事をもらうか、もらえないときはわらじ銭を貰ってでていきます。夫婦者もいたりしたそうです。腕のよい職人も多くいて、他地域の技術や情報を伝える役割をしました。
 
 西多摩の西行さんの話です。
 
 一泊をお願いして仁義を切るのですが、先に仕事が欲しいとか金の話をする者は「金に汚い」と嫌われ、追い出されることもあります。また、わらじ銭を目当てに回っている者もいます。簡単に誰でもできそうだが、この辺だと道場場(どうじょうば)というのが八王子の恩方にあって、そこで修行(作業)をします。そこで一通り修行をするとお墨付きを貰ったようなもんで、どこへ行っても仕事には困りません。そこを素通りするような者は「ろくな奴ではない」ので、なかなか仕事が貰えないのでした。また、西行さんが何かの縁でその地に居つくこともあります。
 
(注) 西多摩の西行さんの話は「東京の農民と筏師 竹内勉 2004年 本阿弥書店」を参考にしている

 全国には木挽き歌が残っていますが、倉渕村史に載っている木挽き歌をあげてみます。
  木挽きは山間の小屋には住めど
     ひき割り御膳は喰べやせぬ
     (ズリコンズリコン)
  山に小屋かけ生木を焚いて
     辛抱するのもぬしのため
  七間三尺その日の役だよ
     あとを挽くのはあの娘のためだよ
  色に持つなら木挽きはおよし
     仲のよい木を引き分ける

 歌の言葉の中に、彼らの生活が表れています。「ひき割り御膳……」はお米のちゃんとしたご飯を食べているよということで、実入りがいいことが解ります。「生木を焚いて……」と乾かした薪ではないので、大変煙がでているところで生活をしている不便さを。「七間三尺……」はその日の仕事の量で、それ以上は自分の手間だと当時の作業量が解ります。

 「東京の農民と筏師」に同じ歌が載っていました。
   アーアー七間三尺 その日の役目だ
   あとから挽くのは あの娘(こ)のもんだいト
 「こういう唄を唄いながら、ズイッコ、ズイッコやるんですよ。」
とありました。労働歌はつながっているものなんですね。 
 
 さて、「色を持つなら……」などのもっと砕けた歌が本当は多かったのではないかなと思いますが、それらがあればもっと活き活きとした山の生活が解ったかもしれません。


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