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Forest Instructor Association of Japan

宮城の海岸林防災林の復興状況と課題 3

執筆:相澤孝夫氏(宮城10-0685)

海岸防災林の復旧方法

 
 海岸防災林の復旧方法は、平成24年2月にまとめられた「今後における海岸防災林の再生について」(東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会)の方針に基づいています。
 これまでの海岸防災林の造成方法に比べて異なることがいくつかあります。中でも「生育基盤の高さは津波で根返りしに くい2~3m程度とすること」が際立っていると思われます。
 これまでの調査で、海岸防災林の樹木の根は地下水の位置より下には分布していないことがわかりました。また、津波により根返りしたクロマツの根の長さは1.8m以下でした。これらから、今後の津波襲来時に根返りがない条件として、植栽する地際から地下水位までの長さが2m以上必要、となったわけです。
 被災地では海岸防災林だけではなく、津波からの多重防御に重点が置かれ、道路や市街化区域なども、2~10m程度の土盛りが必要となりました。このため、盛土材5,300万立方メートルとも推測される大量な土砂の供給源である森林を失うとともに、違法な林地開発が横行してしまいました。もちろん、高台移転の工事で発生した土砂も含まれております。



津波により倒伏または折損したクロマツ
(岩沼市寺島)
(2011年10月28日)

 

海岸防災林に使われる苗木

 
 津波に耐えた海岸防災林では物理的傷害や塩害によりマツの樹勢が弱まったこともあり、松くい虫被害が爆発的に増えました。特別名勝「松島」地域においては、被害量が震災前の平成22年度で3,164㎥から平成25年度で8,204㎥と2.6倍となりました。海岸防災林の造成に当たっては、松くい虫の被害対策が重要となっており、10年くらい前からマツノザイセンチュウ病抵抗性クロマツを用いています。
 宮城県における海岸防災林復旧面積はおよそ1,400haです。東北森林管理局と宮城県の復旧状況の表し方が異なりますが、2016年5月末の工事着手率は国有林で77%、民有林で58%となっています。植栽は治山施設等が完了した後に行われるため、植栽完了は民有林で25%と低い状況です。通常、海岸防災林には1㏊当たり5,000本から10,000本程度植栽しますが、復旧計画では5,000本/haとしていますので、復旧に必要なクロマツ苗は、およそ700万本となります。林業の停滞により苗木生産者が減少していることもあって、苗木生産業者は生産能力を2倍程度にアップする必要がありました。
 一方、宮城県では全国に先駆けて平成20年度からコンテナ苗の生産に力を注いできました。コンテナ苗は、林業の盛んな諸外国で50年くらい前から使われ始めました。海外で造林地を見た方は、日本で使われる裸苗(普通苗)が巨大だと感じたのではないでしょうか。中国山西省で見た裸苗は、出荷時は5㎝~10㎝程度と実に小さいものでした。
 さて、平成25年度の日本国内のコンテナ苗生産量は114万本です。宮城県はその36%、41万本を生産しています。平成21年度には宮城県でもわずか2万本でしたが、急激に伸びたのは、海岸防災林の復旧に使用するクロマツをコンテナ苗で出しているためです。

東松島市宮戸島に大発生したマツ枯れ

(2013年4月28日)
 
拡大した松くい虫による被害木のヘリ搬出
(東松島市宮戸島)
(2015年4月25日)
 
クロマツのコンテナ苗
(名取市台林)
(2014年9月26日)
 





クロマツと広葉樹の比較

 
 宮城県では鳥取県、石川県などから海岸防災林再生用の苗木を寄贈していただきました。寄贈された苗木の樹種はツバキ、ケヤキ、コナラ、クリ、アカマツの5種類で、平成27年3月21日にボランティアにより亘理町の海岸防災林に植栽されました。
 半年後の平成27年9月に宮城県林業技術総合センターが調査した結果は次の表のとおりです。
樹種   植栽本数(本) 生存本数(本)  生存率(%) 
 ツバキ  100 15   15.0
 ケヤキ  280  276  98.6
 コナラ  170  152  89.4
 クリ  450  299  66.4
 アカマツ  1,000  995  99.5
 合計  2,000  1,737  86.9

 このように、樹種ごとに生存率が異なっています。ツバキはかなり枯れてしまいました。ケヤキの生存率は高い値ですが、すべて先端部は枯れており、入れ替わり立ち替わり地際から出た低い枝が細々と生き残っている状態です。コナラとクリも、ケヤキに似た生存戦略をとっているようです。クリはコナラよりも生存率が低い状況です。この表にはクロマツはありませんが、生存率は95%を上回っています。宮城県ではほかの樹種でも試験をしていますので、もう2、3年経つといろいろなことがわかってきます。針葉樹は採種園・採穂園が整備されているので、苗木をそろえやすいのですが、広葉樹の場合は、母樹の選定や、種子の豊凶、苗木づくりなど、大量に苗を供給するにはまだまだ時間がかかりそうです。
 樹種ごとの防潮・防風効果や適した管理方法を比較するには、さらに長大な時間がかかりそうです。
 生存率については、樹種による違いばかりではありません。特に風の強い場所においては、コンテナ苗と裸苗、裸苗の支柱の有無、土質(特に水はけ)、植え方、植栽時期(降水量)、土壌被覆材の有無などに大きく左右されます。枯れた場合の補植については、植栽者により適宜行われています。
強風地に植栽された苗木は、風で揺すぶられ活着が悪くなります。このような場所では空中根切りされたコンテナ苗は裸苗よりも活着率が高いようです。また、コンテナ苗は高い活着率と初期成長を得るために、液肥につけてから出荷されています。最近では乾燥対策などのため、コンテナの用土を工夫して試験が行われています。
 海岸防災林の造成は国と県で行っておりますが、植栽に関しては「直営」、「ボランティア植樹」の2種類があり、ボランティアの貢献度が非常に高いと思われます。特に公益財団法人オイスカ(OISCA)は苗木の生産から植栽までを行い、成長データの収集など詳しい分析まで行って復興への貢献度の高い団体ということができます。
 海岸防災林に用いる苗木の選定に関しては、A「苗の活着の良し悪しや成林しやすさ、潮害や風害などの機能の面から従前通りマツ類を用いる」としたもの、B「マツ類は流失しやすく人家等に被害を及ぼすため常緑広葉樹を用いる」としたもの、C「生物多様性の高いエコトーン(移行帯または推移帯)の原植生(たとえばコナラ・クリなどの広葉樹)を用いる」としたもの、というように3つの主張がありました。
 AとBについては、岩沼市にある海岸防災林と千年希望の丘(岩沼市)などで比較することができます。
また、岩沼市寺島川向地区には盛土材と樹種を変えた4つの試験地がありますので、次回紹介したいと思います。
 
クリは先端部が枯れて萌芽で生存
(亘理町吉田浜)
(2015年10月17日)
 
ボランティアによる植樹
(岩沼市寺島川向)
(2015年5月23日)

造成方法による比較

 
  東日本大震災による海岸防災林の造成方法は、従前の方法とは異なっています。まず、植栽地は砂地ではなく、山土や破砕岩石などで大量に盛土、転圧した部分になります。植栽部分には表層土などできるだけ植栽に適した土を用いること、防風垣にスギ丸太によるハードルフェンスを用いることなどが従来と異なる部分です。
 また、これまでの海岸防災林と違って管理用道路が多く、盛土断面が台形となる「四角錘台」の上部平坦面に植栽します。このため、植栽面は従来の海岸防災林よりも少し小さくなります。さらに、林帯幅が狭く風が強い箇所では、盛土した「四角錘台」の側面に植栽している箇所もあります。
 風が強いところでは、植栽時期などで生存率が大きく異なり、苦戦を強いられています。
 
海岸防災林のハードルフェンス
(岩沼市寺島川向)
(2014年7月12日)
 
クロマツの生育状況
(亘理町吉田浜)
(2016年3月6日)
 
林帯幅の狭い箇所での植栽
(東松島市野蒜海岸)
(2016年7月29日)
 
雨量不足などによる苗木の枯れ
(東松島市野蒜海岸)
(2016年4月20日)

 次回は、岩沼試験地の状況などについて報告する予定です。

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