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Forest Instructor Association of Japan

宮城の海岸林防災林の復興状況と課題 4

執筆:相澤孝夫氏(宮城10-0685)

 今回は、岩沼市の試験地(マツ、落葉樹、常緑樹)と千年希望の丘(常緑樹)の試験地の状況を報告します。

海岸防災林の植栽樹種・方法に関する比較の最新情報

 
 新しい海岸防災林造成方法について、森林インストラクター会みやぎで調査したので、最新情報の結果に検討を加えて報告します。
 海岸防災林の再生には、マツ類、常緑広葉樹、落葉広葉樹を用いることを想定しており、植栽樹種が予想どおりに成長するか、盛土、客土、海砂を用いた場合の成長はどう違うのかなど、従来の造成法とは異なるためわからないことがたくさんあります。このため、森林総合研究所等が試験地を設置しており、ここについて、3年生植栽木の樹種別最大樹高を測定し、評価しました。
 岩沼市寺島川向地区に、①盛土して常緑広葉樹(アカガシ、スダジイ、ウラジロガシ、シラカシ、タブノキ、マサキなど)を植栽、②盛土してクロマツと常緑広葉樹(アカガシ、スダジイ、ウラジロガシ、シラカシ、タブノキ、マサキなど)を植栽、③客土してクロマツと落葉広葉樹(ケヤキ、コナラ)を植栽、④海砂を盛ってクロマツを植栽の4つの試験地があります。詳しくは次の表のように8区分となります。


 まずは、この試験地の3年生時点で評価してみます。
なお、正式な評価はこの試験地を管理する森林総合研究所が行うこともあり、ここでは概要をとらえるのみということにしております。
 調査は、植栽本数が多いため、主な樹種の最大樹高を測定して比較しました。上の表の「種類1」と「種類2」はいわゆる宮脇方式(宮脇昭横浜国立大学名誉教授発案)と呼ばれるもので、植栽は本人が直接指導されました。また、試験地は反復数が2又は4となっており、そのうち1箇所のみを測定しています。
 各試験地の最大樹高の比較は次の表のとおりです。
 最大の樹高を示したのは、試験地8のケヤキで220センチメートルです。最低は試験地5のケヤキとコナラの20センチメートルでした。ケヤキとコナラは第3回で報告したとおり、先端部は枯れ、下方の枝のみが生き残っているのですが、試験地7、8のように隙間が少ない静砂垣では、垣根近くのケヤキとコナラは先端部が枯れずに生育していました。潮風の影響が落葉広葉樹の生長に影響していました。



 静砂垣は試験地4と5が疎、試験地7と8が密となっており、この表からも生育への影響がよくわかります。
 樹種ごとの最大の樹高を比較したグラフは次のとおりです。


 このうち、宮脇方式で植えられた常緑広葉樹のみに注目してみましょう。宮脇方式は、黒土とバーク堆肥を混合した表層に、数樹種のポット苗をランダムな配置で植え、わらでマルチングしたあとにわら縄で固定する方法です。調査した試験地1の常緑広葉樹12種類と落葉広葉樹のヤマザクラを加えた最大樹高のグラフは次のとおりです。



 最大樹高はシロダモの200センチメートル、そのほかタブノキ、シラカシ、アラカシ、ウラジロガシといった高木性の樹種はおおむね170センチメートル以上でしたが、スダジイの最大樹高は75センチメートルと半分以下でした。
 一方、クロマツの最大樹高は次のグラフに示すとおり、最高が試験地8の160センチメートル、最低が試験地5の85センチメートルでした。表層に海砂を盛った試験区よりも、黒土にバーク堆肥を混合した試験区での樹高生長がよいようです。



 試験地毎の樹高生長を評価するために、次のグラフを示します。
 傾向としては、表層に海砂を盛って、静砂垣が疎である箇所は樹高生長が低い結果となっています。


 試験地の様子をGoogle Earthを用いて次に示します。方位は右側が北となります。


 「試験の表」の中で、「マウンドあり」と示してある試験区は傾斜がついています。海向き斜面に植えられた樹木は、陸向き斜面の樹木よりも生長が悪く、概観すると海向き斜面の樹木は陸向き斜面の樹木のおよそ20~70パーセントの高さでした。傾斜の向きで生長が大きく異なり、潮風の影響が強いことがわかりました。
 これらの結果から、3年生の樹高生長の大小は次のようにまとめることができます。

 表層土:黒土+バーク>海砂
 静砂垣:密>疎
 斜 面:陸側向き>海側向き


 調査した箇所の写真を次に示します。
試験地1「常緑広葉樹」

樹高測定
試験地1「常緑広葉樹」
海向き斜面(柵の右側)より陸向き斜面の方が生長がよい
試験地2「クロマツと常緑広葉樹」
黒土とバーク堆肥混入の表層盛土ではクロマツ、常緑広葉樹の生長は同じくらいか
ややクロマツがよい
試験地3「クロマツ」

海側を向いたクロマツ(静砂垣の右側)は陸側を向いたものより生長が悪い
調査地4「落葉広葉樹」

静砂垣が疎らだと先端部が枯れる
試験地6「クロマツ」
表層が海砂でマウンドを作らずに植えた
クロマツは最も生長が劣る
調査地7「落葉広葉樹」

ケヤキは静砂垣を密にして風の影響を
小さくすると生長がよい
試験地8「クロマツと落葉広葉樹」
マウンドを作らないで植えたクロマツと
落葉広葉樹の生長が劣るのは
水分と養分の影響か


千年希望の丘の常緑広葉樹の生育状況

 
 仙台空港と海岸防災林の間に千年希望の丘1号丘があります。ここに植栽された常緑広葉樹について、海側斜面と陸側斜面の最大樹高を測定しました。
 千年希望の丘は、海岸防災林の陸側に位置するモニュメントで、東京大学名誉教授の石川幹子さん(現中央大学)が提案されたものです。その後、宮脇昭氏の指導により常緑広葉樹が植栽されており、植栽にかかるコストは海岸防災林の2倍以上といわれています。
 8種類の樹木を調査したうち、海側と陸側の斜面に共通したアカガシ、ウラジロガシ、タブノキ、スダジイ、シラカシ、シャリンバイの6種類について、比較しました。
 陸側斜面における樹種毎の最大樹高の平均は162センチメートルで、次の表に示すように、海側の1.7倍を示しました。先に述べた試験地の調査結果と同様に、海から直接潮風が当たる海側斜面で生育が悪い結果となりました。シャリンバイは低木生のためか、潮風の影響は見られませんでした。





通路の右側が海側斜面(海向き斜面)、
左側が陸側斜面(陸向き斜面)


防潮堤の陸側に直接植樹した場合の樹木の生育状況

 
 仙台空港の汀線近くにある国土交通省設置の防潮堤です。宮脇昭氏の指導により、防潮堤の陸向き斜面に盛土を行い、盛土上に直接樹木を植栽されました。「緑の防潮堤」と呼ばれています。
 植栽当初はマサキ以外の樹木はほとんど枯れました。その後、試行錯誤し、オオシマザクラなどの落葉広葉樹と、その下に配置されるようタブノキなどが植えられ、風よけ用ネットが張られ、現在枯れているものは見られません。
 防潮堤の最高面(天端)より上は、海から常に潮風が当たるため、今後の樹高生長は望みにくいと思われます。これから、どのように生長するのか注目しています。

防潮堤に直接植えられた「緑の防潮堤」


通常の海岸防災林の生育状況

 
  仙台空港の海側にある海岸防災林を調査しました。造成当初は盛土部分の排水が悪く水たまりができていましたが、排水処理を行い、クロマツの生長は良好です。葉の色つやも好ましいものとなっています。植栽時20センチメートル程度のコンテナ苗は、現状では1メートル程度に生長しています。

順調な生育を見せるクロマツ

表面は木材チップでマ ルチングされている

 以上紹介した海岸防災林については、経過状況などご覧いただくようご案内できますので、必要があれば連絡をお待ちしています。

 次回は、海岸防災林の具体な復旧状況と今後の課題について、報告する予定です。


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東北・宮城の海岸林防災林の復興状況と課題
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