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Forest Instructor Association of Japan

最終回〜森林インストラクターと木育の関わり方〜

執筆:工藤森生氏(北海道8-0526)

 いよいよ、今回で最終回を迎える訳ですが、前半を道民意識調査の結果と教育と木育の関係を、後半をまとめとして、今後の木育の展開と森林インストラクターの木育との関わり方について、私なりの考えを述べさせていただきます。


道民意識調査の結果に見る木育の認知度

 
  先月、平成28年度道民意識調査の結果が発表されました。これは、道民の意向を道政に反映させるため、道政上の重要な課題や主要施策について世論調査をするものです。
(参考)http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/01chosei/ishiki/28kekka-sinrin.pdf
 「木育」の認知度という項目では、前回(H24)調査の約27%から約40%へ増加になりました。認知度の目標は、平成44年度までに80%を目指すことにしています。
 平成16年度から取り組んだ木育ですが、9年かけて認知度は27%、13年目にして40%と、まだまだ、道のりは厳しいと感じるところです。とりあえず、4年間で13%UPとなった要因としては、木育マイスターの育成が進んだことが上げられます。
木育マイスターの育成は、平成22年度から実施され、平成24年までに65名を育成し、現在は、176名のマイスターが全道で活躍しています。平成25年には、木育マイスターの組織化が地域で始まり、その頃から地域での木育活動が定着し始めました。これにより、マイスターの自立化も進み、道の政策は、ある程度、成果を上げていると思います。
認知度40%の中身ですが、注目すべきは、年代別の結果です。木育を知らないと多く回答したのは20代、30代、反対に聞いたことがあるまたは、知っていると多く回答したのは、50代以上の方々となりました。
 私としては、木育の認知度を上げるターゲットは、20代〜30代ではないかと考えており、その年代が興味を持ちそうなメニューをイベントで用意していました。しかし、実際は私の思惑どおりなっていない実態が見えてきました。
 この調査結果はどのようなことなのでしょうか。それは、北海道の家庭環境の実態を表しています。なかなか給与水準が上がらない北海道においては、子どもを両親に預け、夫婦は共働き、土・日曜日も働き、厳しい労働実態にあるのです。
 考えてみればイベントには、お孫さんを連れたおじいちゃんやおばあちゃんの参加が多かったし、イベント開催は日曜日にして欲しいとのアンケート結果もあったのです。全く気づいておりませんでした。
 私は、「小さい子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広いのが木育」と豪語してきましたが、自分が実態を把握していなかったことにショックを感じております。今後の木育の進め方、木育活動メニューも一工夫が必要であると考えています。

教育と木育


 道が木育の取組をスタートさせ13年がたち、それなりに認知されつつありますが、その結果、道議会でも木育の条例制定や基本計画の策定などが取り上げられるようになってきました。それは、比較対象が食育だからです。現在、食育は、国の「食育基本法」に基づく食育推進計画の策定や北海道の条例制定に至っており、学校のカリキュラムに組み込まれていることから、木育も普及を図るためには、食育と同様に扱うべきという論議です。
 また、森林環境教育で代表されるLEAFとの違いなども問われるようになりました。LEAFとは北欧の森林業界が森林産業の普及啓発のために開発したプログラムで、子どもたちの環境意識の向上と環境教育に関わる教師の育成を目的としています。原型となるプログラムは、1983 年にノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどの北欧で開発されたとされています。北欧では、実際に学校のカリキュラムとして実行されているそうです。
 食育もLEAFも「木育との違いは何か?」と問われれば、「法律または制度に基づくカリキュラムに位置づけられていること」という答えになるのではないでしょうか。
 木育は、法律や制度というような強固な枠組みではありませんが、「森づくり」と「木づかい」をテーマに「木とふれあい、木に学び、木と生きる」という人づくりと「人と森のつながり」というキーワードの緩い枠組みの中で、取り組まれていますので、「教育」という言葉に左右されるものではないと思うところです。
 私は、教育の現場から離れてしまえば、食育もLEAFも行っていることは、木育と変わらないと考えます。
 今年行ったイベントで、秋さけと野菜を使った親子料理教室を行いましたが、材料にキノコ、お皿にトドマツの経木を使ってもらい、林・農・水産業を繋げた食育教室を行いました。森の中では、森林インストラクターが講師となり、算数や英語を勉強する取組もしました。

 

木育イベントを楽しむ子どもたち

 私としては、広い意味での教育ということで、食育もLEAFもそして木育も全て含まれると考えています。あまり教育という言葉に縛られず、学校や地域の子供会などと単純に木育を楽しむことでよいと思います。
 今、木育は、注目され始めているだけに、それを利用しようとしている方々が数多くいますが、個人、団体の都合で決まった枠に収めないで欲しいと切に思うところです。
 道は、森林づくり基本計画や議会答弁で、「木育を道民運動として展開する」としており、私としてもそれに沿った形で幅広い取組にしたいと考えています。


今後の木育の展開と森林インストラクターの木育の関わり方


 これまでの木育は、道が国に対し働きかけ、平成18年の「森林・林業基本計画」に木育が初めて記載された以外、どちらかというと内向な取組を行ってきました。先ずは、北海道発の言葉として、道内に定着させ、認知度を上げることが重要と考えたからです。併せて木育は、北海道の考え方を道外の方々に押しつけるものではないという考えから、道外に対して積極的なアピールをしてきませんでした。よって指導者である木育マイスターも予算的なこともありますが、結果的に道内在住の方に限っています。
 道内の認知度が40%を超えようとしていること、道外から住民票を移してまで木育マイスターになりたいという声がかなりあること、道外の木育に関するシンポジウムなどに参加のオファーが増えていることなどから、そろそろ全国的な動きがあってもよい時期と考えます。
 道外で行われている木育活動は、道から発信する情報を参考にしているそうですし、木育は北海道発の言葉であるという認識もかなり浸透してきているようです。
今後の木育の展開は、全国展開ということになると考えます。その一つが、平成26年度から道が取り組んでいる『「希望」を「きぼう」でプロジェクト』です。7.5cmの木の棒に東日本大震災の被災者に向けて応援メッセージを書き込み、これを集めて木のプールにして被災地に贈る取組です。資材提供は企業や団体など、メッセージを書き込むのは道民の方々、現地に贈るのは道庁と役割分担をしながらおこなっています。今年を含め岩手県、宮城県、福島県などに6セット贈りました。当初は、道民参加型の木育体験を全道で普及、展開するために行ったものでしたが、このようなことを足がかりに積極的に北海道の木育を道外にアピールしていくこ  メッセージを書き込んだ「きぼう」
とが必要と考えます。
(参考)http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/sky/mokuiku/kibou_project.htm
 
メッセージを書き込んだ「きぼう」

 もう一つは、森林インストラクターの関わりです。道や木育マイスターは、残念ながら行動範囲が主に道内になってしまい、全国での木育の普及は国に頼るしか無い状況です。その点、森林インストラクターは、全国にそれぞれおり、全国会、地域会の組織があることから木育の広範囲な普及が可能と考えます。
 ここで言う普及とは、北海道の木育を実践するとか理念を教えるということではなく木育という言葉の普及です。森林環境教育や森林学習という堅い教育を想像させるものから木育という言葉に代えて、柔らかいイメージに変えるだけでよいと思います。そして森林インストラクターなりの木育を実践していただければ、木育の普及につながるということです。木育は、「あれも木育、これも木育」と言うように食育と同様、幅広く使える言葉なのです。
 木育という言葉は、誰が使ってもよいように商標登録などしていません。是非、森林インストラクターの活動で木育という言葉を様々な場面で使っていただきたいと思います。
 今回で北海道から広がる木育に関する報告を最終回とさせていただきますが、今後、広く全国の森林インストラクターが行う木育について研究していきたいと考えておりますので、その都度ご報告させていただきます。

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