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Forest Instructor Association of Japan

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2018年9月 洪水と森林伐採の関係を指摘した江戸時代の手紙について考える

大分県の花月川の洪水被害の原因が森林伐採にあるとした江戸時代の塾主の手紙が見つかったそうです(参考文献1)。そこで、今月はこの手紙について考えてみたいと思います。

■塾主の手紙
江戸時代の私塾「咸宜園」の2代目塾主、広瀬旭荘は安政5(1858)年に花月川が氾濫した災害の原因を「山の木を伐り荒らしたためと考えられる」とし、「このような災害が続けば、池や田んぼは消滅して日田の盛衰に関わる」と警告。対策をとらないと「百年後には大きく衰える」と指摘したそうです(参考文献1)。

■森林が有する機能とその重要性
現在では健全な森林が有する機能は様々な視点で調査され、一部の代表的機能は貨幣価値が試算されています(参考文献2)。機能毎に換算方法が異なるケースもあるため貨幣価値の機能間の比較には注意が必要ですが、表面浸食防止機能など洪水防止に関する機能が比較的高い価値を有していることが読み取れ、江戸時代の広瀬旭荘の指摘も大きくずれていないと考えることができます。

■自然災害の要因が複合的になる現在に必要なこと
今年は台風や局地的豪雨による土砂流出の災害が多く発生しています。近年みられる極端な豪雨は、地球温暖化の影響の可能性も指摘されており、森林整備の有無に関係なく複合的な要素が関係して大きな被害が発生するような状況になっていると思われます。温暖化の影響について世界中で研究が進んでいますが、一方、日々の生活に追われている私たちは身近なところで生じている自然のサインに鈍感になっているような気がします。国土の67%が森林で急峻な地形が多い日本に住む私たちには、自然界からのサインを見逃さない観察力が求められているのかもしれませんね。

■まとめ
今月は江戸時代にみられた百年先を見据えた森林整備の必要性の指摘から、身近な自然との関わりの大切さについて触れてみました。自然の変化を感じ取るには日ごろから自然に触れあうことが重要です。私たち森林インストラクターもそのお手伝いが少しでもできればよいと思います。


参考文献1:西日本新聞「160年前の洪水、原因は「木の伐採」だった 広瀬旭荘の手紙を初公開 [大分県](2018年08月17日)」(2018年8月21日閲覧)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/oita/article/441791/

参考文献2:林野庁ホームページ「森林の有する多面的機能について」(2018年8月23日閲覧)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/tamenteki/index.html



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