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Newsを考察

2019年10月 鉄道林について考える

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の鉄道林の植樹式に関するニュース記事がありました。そこで、今回は身近なようで車窓の一部として見過ごしているかもしれない鉄道林について考えてみたいと思います。

■JR東日本の取り組み
JR東日本秋田支社は奥羽本線の鹿渡5号という鉄道林地内で「新しい鉄道林」植樹式を開催し、企業や自治体関係者のほか地元の小学生など約800名が参加したそうです(参考文献1)。JR東日本の鉄道林は生きた防災設備として約580万本、約4,000ha、約1,200箇所に及び、防災林、環境保全林、緑地帯に分類されています。「新しい鉄道林」プロジェクトは2007年度から開始した線路の防災と沿線の環境保全の両立を目ざした取り組みで、更新時期を迎えた鉄道林の植え替えをおよそ20年かけて行います。強い生態系を有する森林に向け、対象地の風土に合った複数の樹種を混植しています。今回の例では、2,500平方メートルの敷地に、コナラ、クリ、イタヤカエデなど13種類、およそ7,000本を植樹する計画とのことです(参考文献1、2)。

■鉄道林の役割の変遷
我が国に初めて設置された鉄道林は、明治26年(1893年)に当時の日本国有鉄道が東北本線の水沢-小湊間に設置したふぶき防止林で、昭和35年(1960年)には我が国初めての防雪林として鉄道記念物第14号「防雪原林」に指定されました。鉄道林はその後、逐次雪崩や土砂崩壊等に対する防護設備としても発達していきました。100年以上の歴史を持つ鉄道林の役割は、吹雪、雪崩、飛砂、土砂崩壊などからの線路防護という防災機能と共に、その時代に即して変化してきました。当初は林業経営であったようですが、昭和40年代半ばからは林業収益による森林の維持が困難になり、自然に近い林分への復元も考慮しつつ防災設備としての合理的な森林の維持管理を推進しているそうです(参考文献3、4)。

■防災機能の維持管理
鉄道林はその目的が継続的な防災であるため、50年を想定した維持管理方法なども決められており、現場では高度な判断も要求されるそうです。また、防災の効果の定量評価は防いだ災害の影響を想定する必要があり難しいものですが、上越線において、なだれを防止した機能を定量評価した例があります。その評価からは、なだれ防止林の効果が表れるまで30年程度かかっているとのことです(参考文献4)。このように、鉄道林の維持管理には高度な技術や将来予測が必要であることに加え、今ではなく次の世代のことを考えて地道な活動を進めていることに頭がさがりますね。

■まとめ
今回は鉄道林を取り上げました。鉄道林の長い歴史の背後には、その森を支えてきた先輩方の知恵とその仕事を受け継ぐ地道な管理があります。このような森林は、無くなった時に初めてその大切さに気が付いたりするものです。JR東日本の例に見るように、地域と人たちとの交流なで、多くの人たちが鉄道林に関心を持つようになるとよいと思います。鉄道林の変遷を知ることは、長く森林を維持管理していくにあたって多くのことを教えてくれるのではないでしょうか。筆者も車窓から鉄道林を探して、背後にある生い立ちに思いを巡らしてみたいと思います。

参考文献1:レイルラボ「JR東、奥羽本線の沿線で「新しい鉄道林」植樹式(2019年9月12日)」(2019年9月15日閲覧)
https://raillab.jp/news/article/17340

参考文献2:林野庁ホームページ「森林な人々第6回 東日本旅客鉄道株式会社」林野2014.9 No.90 (2019年9月15日閲覧)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/pdf/rinya_no90_p18_19.pdf

参考文献3:長崎敏也,「鉄道林経営の変遷(平成30年3月9日)」, 日林関西 支論5,(1996), (2019年9月15日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safskansai/5/0/5_KJ00008210042/_pdf

参考文献4:島村誠,鈴木博人, 「鉄道林:成立経緯と施業の変遷」, 土木史研究 第16号, 自由投稿論文, pp566-572, (1996), (2019年9月15日閲覧)
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00044/1996/16-0565.pdf




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