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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2020年9月 エネルギーの森について考える

今月は木質系バイオマス発電の燃料向けに用途を絞った森林を国内に「エネルギーの森」として整備しようというニュースを取り上げます。

■木質系バイオマス発電を取り巻く課題
木質系バイオマス発電についてはこのコーナーで2回取り上げています。2015年12月には定量的な分析事例を引用して燃料供給源の環境配慮の重要性を指摘し、2019年1月には燃料の海外調達の現状や海外の燃料供給源の樹種に合うきめ細かい管理の必要性を述べました(参考文献1、2)。このコーナーでは燃料供給源に目を向けることの大切さを考察してきましたが、「エネルギーの森」の計画にはそれらの課題解決のヒントがあるかもしれません。

■エネルギーの森とは?
「エネルギーの森」はバイオマスエネルギーの地産地消のための森林で、林野庁と資源エネルギー庁が確保を目指した検討を始めました。国内の豊富な広葉樹や、生育が早い樹木の活用が想定されています(参考文献3)。

■自然環境との調和の実現に向けて
木材資源を枯渇することなく活用していくには、成長の早い樹種の利用も効果的ですが、樹種ごとに持つ成長が早い時期を効果的に活用する工夫も大切です。そのためには適切に森が手入れされ、成長が早い時期に光がきちんと枝葉に届く状態をつくることが重要で、植わっている木の成長量の特性をきちんと理解しておく必要があります。手入れがうまくいくと、木材資源の供給効率が上がることに加え、林床にも光が入るようにもなり、その森の生態系の保全にもつながります。「エネルギーの森」がこのように維持管理されていくと良いですね。

■まとめ
「エネルギーの森」の維持管理には、森の資源をうまく活用してきた先人の知恵が役に立つかもしれません。実際の検討では対象となる森を昔から知っている地域の皆さんの協力体制が得られる仕組みができるとよいですね。筆者は東北のアカマツ林の生産効率を複数の伐採シナリオを設定して計算したことがあるのですが、標準的な伐採方法(検討した地域では林齢40年を標準伐期として主伐や間伐を行う方法)が効果的であるという結論になりました。標準的な方法は昔からの経験に基づくものと思われ、先人の知恵の正しさを改めて思い知らされました。


参考文献1:日本森林インストラクター協会ホームページ「Newsを考察 2015年12月 木質系バイオマス発電の燃料供給源の森林施業効果」(2020年8月22日閲覧)
https://www.shinrin-instructor.org/news/news201512.html

参考文献2:日本森林インストラクター協会ホームページ「Newsを考察 2019年1月 木質系バイオマス発電の燃料供給源について考える」(2020年8月22日閲覧)
https://www.shinrin-instructor.org/news/news201901.html

参考文献3:東京新聞TokyoWeb「バイオマス発電燃料用に森林確保 政府検討、再生エネの普及促進へ(共同通信)(2020年8月19日)」 (2020年8月22日閲覧)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/49756?rct=economics




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