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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2021年7月 ホタルと人間の関わりについて考える

6月下旬から8月にかけてはホタルが光を放ち舞う時期でもあります。そこで、今月はニュースではないのですが、ホタルついて考えてみたいと思います。

■ホタル
ホタルといえばゲンジボタルとヘイケボタルを思い起こしますね。他にもヒメボタルなど日本には40~50種ほどのホタルが存在しています。ゲンジボタルはヘイケボタルより大きく、ゆっくり光るところなどで区別ができます。飛んで舞うことが多いのはゲンジボタルの方です。ホタルは地域による個体差が知られており、発光間隔は地域の特徴があるそうです。光ることはオスとメスが出会うことの合図とされ、6月から8月頃に見られます。

■現在の取り組みと課題
ご存じのようにホタルは、洗剤、農薬、化学肥料などの使用に伴う生息環境への影響(カワニナなどのエサの減少も含みます)、街灯による暗闇の減少、などにより姿が減ってしまいました。このような中、ホタルの飼育、生息環境の保全などが各地で行われています(参考文献1)。一方で、ホタルやカワニナなどの放流に伴う遺伝子のかく乱など問題も明らかになってきており、国や教育現場では対策が検討されています(参考文献2,参考文献3)。最近ではLED照明の影響も指摘されています(参考文献4)。

■ホタルは身近な生き物
話は変わりますが日本の唱歌である「蛍の光」は日本人が西洋音階に親しみを持つよう、スコットランド民謡に日本の歌詞をつけたものですが、歌詞がつけられた明治時代にはホタルは身近な存在だったようです。明治から大正にかけてのホタルの生息状況を当時の新聞記事や広告を基に調べた興味深い報告があります(参考文献5)。この報告によりますと、明治10年代~20年には、大阪の桜の宮、天王寺、北野、今宮、京都の桂川、宇治、東京の小石川や広尾で野生のホタルを十分鑑賞でき、桂川では「川が埋まるほど」のホタルが飛んでいたようです。明治20 年代半ばでも向島、広尾、小石川江戸端、三河島、入谷田甫などでホタル狩りが行われていました。しかし、明治30年代に入ると観賞用の捕獲などの影響もあってホタルは減り始め、明治40年代には東京の真ん中でもわずかにみられる程度にまで減ったそうです。

■まとめ
ホタルは人間の身近な存在であったがゆえに、人々の生活様式の変化の影響を大きく受けたのかもしれません。地方では今でも注意深く観察すると街中でも田んぼや果物畑でホタルを見かけることがあります。近年は農薬の環境への影響は抑えられ、農業用水や下水の管理も進みました。各地のホタルの生息環境整備が正しくなされることでホタルがまた身近な存在になるとよいですね。街灯の設置やコンクリート製の強固な護岸は安心安全のために必要ですが、それらはホタルにとっては必ずしも好ましい環境ではないかもしれません。人間にもホタルにも好ましいバランスが取れた環境が構築できることが大切であると思います。

参考文献1:環境省「小さな自然再生活動事例集(2015年3月)」(2021年6月15日閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/saisei/pamph-27/tiisanashizensaisei-1.pdf

参考文献2:山野井貴浩、佐藤千晴、古屋康則、大槻朝「ゲンジボタルの国内外来種問題を通して生物多様性の保全について考える授業の開発」, 環境教育, 2015年25巻3号, p.3_75-85, (2021年6月18日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoee/25/3/25_3_75/_pdf

参考文献3:農林水産省農村振興局農村政策部農村環境課「生態系配慮施設の維持管理マニュアル(平成28年3月)」 (2021年6月16日閲覧)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/kankyo_hozen/attach/pdf/index-16.pdf

参考文献4:宮下衛「ゲンジボタル・ヘイケボタル幼虫に対するLED照明の影響」, 土木学会論文集, 2009 年65巻1号, p.1-7, (2021年6月18日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejg/65/1/65_1_1/_pdf

参考文献5:保科英人「明治百五拾年 近代日本ホタル売買・放虫史」伊丹市昆虫館研究報告第6号, 2018年3月, (2021年6月16日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itakon/6/0/6_5/_pdf/-char/ja



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