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Forest Instructor Association of Japan

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2023年10月 小学校の机の天板交換の取り組み

三重県尾鷲(おわせ)市の一部の小学校の机の天板を子供たちが交換しながら次の世代に引き継ぐ取り組みから、資源の利用について考えてみたいと思います。

■尾鷲市の取り組み
 尾鷲市では市内の一部の小学校の机と椅子に尾鷲ヒノキを採用しており、机の天板は表面を削りながら使い続けています。新入生は削られたきれいな天板を自ら交換して6年間使い、次の世代にバトンタッチします(参考文献1)。記事では子供たちがよろこぶ様子が伝えられおり、資源利用を学ぶ良い事例だと思います。ちなみに、利用される尾鷲ヒノキは日本農業遺産の第一号に認定されるなど、急峻な地形と日本有数の多雨が生み出す地域の特質を活かした伝統産業です(参考文献2)。

■木工家具を使う効果
木工家具を小学校で使うことは子供たちに様々な効果をもたらすと言われています。例えば、心理面では視覚・嗅覚・触覚など五感に対する効果や地域の伝統文化を知ること、教育面では物を大切にすることや環境教育の教材利用などです(参考文献3)。また、尾鷲市と同様の事例は同じ三重県の大宮町の小学校でも見られます(参考文献4)。

■小学校の取り組みはサーキュラーエコノミーそのもの
話は変わりますが、欧州が2019年に発表した成長戦略「欧州グリーン・ディール」では、サーキュラーエコノミー(CE)と呼ばれる循環型経済への移行が中核的目標になり、国際的な動きになりつつあります(参考文献5)。CEの考え方として、製品をできるだけ長く使い、再利用、リサイクル、再生することが示されており、今回紹介した小学校の取り組みは、良い実践例と言えます。最近は減ってしまいましたが、お椀の漆の再塗布や桐ダンスの再生などの身近にあった習慣もCEそのものでした。

■まとめ
海外をよく訪ねる知人から、海外では古い建物や古い日常品を補修しながら長く使う習慣が日本よりも一般化していると聞いたことがあります。日本でも資源を賢く活用してきた知恵がもっと注目されても良いと思います。

参考文献1:中日新聞「6年間よろしく。ヒノキの机 尾鷲・賀田小1年生、自ら天板交換(2023/9/8)」(2023年9月17日閲覧)
https://www.chunichi.co.jp/article/765065

参考文献2:三重県ホームページ「「尾鷲ヒノキ」が日本農業遺産第一号に認定されました!」(2023年9月10日閲覧)
https://www.pref.mie.lg.jp/SHINRIN/HP/mori/p0009200012.htm

参考文献3:文部科学省ホームページ「木材を活用した学校用家具の事例集(平成17年3月 社団法人文教施設協会)」(2023年9月17日閲覧)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/06051207.htm

参考文献4:文部科学省ホームページ「木材を活用した学校用家具の事例集 第四章書面調査事例(平成17年3月 社団法人文教施設協会)」(2023年9月17日閲覧)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/06051207/006/018.htm

参考文献5:独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)「調査レポート EUの循環型経済政策(2022年10月)」(2023年9月17日閲覧)
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2022/01/60d6edca66cfec17.html



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