昨年12月には、早い雪の到来により日本各地で大雪によるさまざまな影響がありました。徳島県で発生した停電の背後には森林の放置という問題があるようです。そこで今月はこの話題を考えてみたいと思います。
■大雪による倒木
大雪で多くの世帯が一時孤立状態になった徳島県西部では、倒木による大規模停電が発生しました。倒木が主要因による電線の切断は600箇所を超えたそうです。地元の森林組合によると、倒木の発生は不必要な細い木などを間引きする間伐などの手入れが行き届いていない場所で多い傾向があるとのことです。私有林が多いことも手入れが行き届かない原因になっているようです(参考文献1)。
■私有林の現状
私有林の現状として、所有者や作業員の高齢化に加え、森林の維持管理のノウハウを所有者の子どもなど次の世代に継承することが難しい場合も少なくないようです(参考文献1)。この背景には、子どもの世代が安定した生活を求めて都市部へ移ってしまうという、社会構造に関係する難しい問題があります。
■次の世代への継承の難しさ
日本は、海外からの人の移入がないかぎり、間違いなく人口が減っていきます。ということは、森林整備のノウハウを伝えるべき若い世代の受け手も減っていきます。これまで、森林の多様な機能の維持や、伐期を迎えた人工林が多いことを背景に、林業分野をはじめ、産官学の連携なども進めながら森林整備への様々な取組がなされています。しかし、山村の過疎・高齢化、都市部への人口集中の流れは止まりません。一方で森林の方は待ってくれません。今、私たちにはさらなる工夫が求められているのです。
■まとめ
最近はスポット的な豪雨のような異常気象も増え、荒廃した人工林による災害は日本全国どこで発生しても不思議ではありません。一方、整備された健全な森林の恩恵は、都市部の住民もふくめて私たちみんなが享受しているといっても過言ではありません。都市部の人が週末に森林整備を手伝う、または山村と都市の二重生活を行う、というような発想も必要なのかもしれません。私たち(一社)日本森林インストラクター協会は、全国のネットワークを活かし、都市部と山村をむすぶツーリズム、また、街づくりなどの分野のスキルを活かした、鎮守の森を中心とした地域コミュニティづくり、などの検討を始めています。これらの取り組みが実を結び、より多くの人たちに森林の大切さを伝えて、次の世代への橋渡し役ができればと思います。
参考文献1:NHK ON LINE News 「徳島 大雪による停電 背景には森林放置 2014年12月11日」
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