今月は流域の環境保全を目的とした上中下流域の地域を連携する協議会設立のニュースを取り上げます。
■相模川と多摩川上流域で協議会設置の動き
相模川(桂川)と多摩川の上中下流域を連携して流域の環境保全に取り組む協議会立ち上げの動きが出ています。両河川の水源は山梨県内で、上流域の水質保全、森林整備などによる環境保全活動の負担を、恩恵を受ける東京都や神奈川県の中・下流域住民も含めて広く分担することで、上流側の森林が適正に維持され、自然の恵みを持続的に提供できる仕組みを構築するのが狙いだそうです(参考文献1)。
■全国にみられる流域連携の取り組み
「流域」をキーワードとして上流と中・下流域が連携する取り組みは全国にみられます。形態としては、独自の組織、自治体との連携(参考文献3)、学術的活動(参考文献4、5)、など様々です。このコーナーで以前(2012年3月)に紹介した気仙沼の「森は海の恋人運動」もあてはまりますね。各々の活動の目的の細かなところは異なると思いますが、中・下流域さらには海で、川のきれいな水の恵みを享受する人たちが、その川の環境を維持しようとしている点は共通ではないでしょうか?今回の相模川と多摩川の取り組みは、上流域の森林整備の財源確保を目指しています。東京都や神奈川県の中・下流域は人口密度も高く、協議会の設置と運用がうまく進むことを期待します。
■流域連携への期待
流域連携はこのコーナーでも何回か触れている大切な人のつながりを促進します。そのつながりとは、地域、世代、学問の領域を超えたものです。学術的な活動をしている四万十・流域圏学会(参考文献4)や千曲川流域学会(参考文献5)でもその重要性を指摘しています。そこには、森林整備、水質、生物多様性といった、いわゆる環境問題に関する話題だけでなく、川を取り巻く景観、文学、水運、などさまざまな話題が広がります。すべての事柄に対応すべきということではないのですが、流域連携による人のつながりから様々な分野に関心と知識が広がることも、素晴らしいことですよね。
■まとめ
筆者が住んでいる千曲川の上流域には縄文遺跡が多いのですが、浅間山のふもとの御代田の遺跡調査から縄文人がシャケを食していたことがわかっているそうです。最近では日本海から長野県の上田市までシャケが遡上してきたことが確認されニュースになりました。縄文の昔には本州内陸の多くのところにシャケが生息していたのかもしれませんね。川は水を運ぶだけでなく、様々な恵みを与えてくれます。千曲川スケッチで有名な島崎藤村の文学にも関心は広がるところです。
参考文献1:産経新聞「自然の恵み、末永く 相模川と多摩川上流域で協議会設置の動き」山梨 3月3日
http://www.sankei.com/region/news/150303/rgn1503030021-n1.html
参考文献2:経済的な側面から見た流域連携の促進に関する研究会「経済的なつながりを通じた流域連携の取り組み」, 国土交通省土地・水資源水資源部水源地域対策課, 平成 16 年3 月
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/i_watersupply/genryu.pdf
参考文献3:国土交通省九州地方整備局河川部ホームページ
http://www.qsr.mlit.go.jp/n-kawa/katudo/
参考文献4:四万十・流域圏学会ホームページ
http://www.lab.kochi-tech.ac.jp/shimanto/tuite.html
参考文献5:千曲川流域学会ホームページ
http://www.mmdb.net/ryuiki/index.htm
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