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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2015年9月 アップルなど世界規模の企業による森林購入を考える

アップルやイケアなどの国際的企業が森林を購入するというニュース記事がありましたので、今月のこの話題を取り上げてみたいと思います。

■アップルやイケアによる森林購入
アップルは36,000エーカー(約146平方キロメートル)の森林を購入し、環境保護団体「The Conservation Fund」と提携したWorking Forest Fundプログラムを通じて同社製品の梱包に使う紙やパルプの製造に必要な木材の持続可能な利用による安定した供給を確保していく計画とのことです(参考文献1)。
一方、イケアは83,000エーカー(約336平方キロメートル)の森林を購入し、再生可能な資源をつくるために森林を管理するとともに、家具生産のための木材使用の削減も進めるそうです(参考文献2)。

■森林資源の持続可能性への配慮
日本でも企業の森林とのかかわり方は多様になっています。従来からの一般的な企業による植林や森林保全活動に加え、企業とNGO/NPOや公的機関とのパートナーシップを組む場合や原材料調達を目的に推進するケースがみられます(参考文献3)。一方で、アップルやイケアの特徴的な取り組みは、自社製品の製造に必要な森林資源の持続可能性を考慮していることです。特に、アップルがThe Conservation Fundと連携するプログラムの目標は、Working Forestが生産する以上の紙製品を使わないように制限をもうけるとのことです(参考文献2)。

■森林資源の持続可能な利用を進めてきた先人達
狭い島国で急峻な地形が多い日本では、昔から森林の過度な伐採がおよぼす土砂災害などの影響に配慮しながら、木々が育つ数百年という時間サイクルを考慮して森林資源を枯渇することなく利用してきました。この背景には、奈良時代に国が示した「山川藪沢(さんせんそうたく)の利は公私これを共にする(=公私共利)」という、森林などは「公」なるものであるが「私」の利用も認め、恵みをもたらす森林を維持管理すべきという考え方が影響していると思われます(参考文献4)。加えて、保安林という概念が導入される前の江戸時代には、各藩が災害防止策として、村落地域において共同利用している村持山等の扱いの規制などを進めてきました(参考文献5)。一方で、庶民の側も、薪燃料として多く利用されたナラは、切り株から新芽が育つ萌芽更新という更新方法を取るため、ナラ林としてみた場合に、ナラの成長を超えない範囲で伐採するといった知恵を経験的に持っていたのではないしょうか。

■まとめ
森林の持続的な利用を考慮するという考え方は、日本の先人たちが継続的に持っていたものです。日本において、森林を持続的に利用していく知恵は、伐採禁止という制度に加え、上述したナラ林の例など木の性質を活かした合理的な利用方法に及んでいます。これらの知恵は森林を枯渇させないという森林の維持管理に加え、このコーナーでも何度か触れた適材適所利用という、木材を使う側にも多くあります。私たち森林インストラクターはこのような先人たちの知恵も、後世に継承できるよう情報発信していきたいと思います。

参考文献1:WIRED Webサイト,「アップル、146平方キロメートルの森林を購入(2015年4月21日)」(2015年8月16日参照)
http://wired.jp/2015/04/21/apple-buys-forest/

参考文献2:ギズモード・ジャパン/Excite Japan Webサイト, 「なんで? イケアやアップルが広大な森林を買いまくっている理由(2015年8月9日)」,(2015年8月16日参照) http://www.excite.co.jp/News/it_g/20150809/Gizmodo_201508_post_17882.html

参考文献3:環境省「フォレスト パートナーシップ プラットフォーム」ホームページ,(2015年8月15日参照)
http://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/database/index.html

参考文献4:農林水産省「平成13年度 森林及び林業の動向に関する年次報告」,(2015年8月22日参照)
http://www.maff.go.jp/hakusyo/rin/h13/html/SB1.2.3.htm

参考文献5:林野庁ホームページ,「保安林制度の概要」,(2015年8月16日参照) http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h15-7gatu/0710/s4.pdf


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