木材が人の健康に与える効果を検証する研究が九州大学で進められており、木の家に住むことの良さが、明らかになってきたそうです(参考文献1)。そこで今月は、木の家について考えてみたいと思います。
■木材の効果に関する研究
木材が人の健康に与える効果を化学、物理、生理心理学的な手法を用いて検証する産学連携の研究が九州大学で行われています。睡眠時の脳波や心電図の測定、建物から出る揮発性成分の測定、アンケートなどから、木の家と合板などの新建材を用いた家を比較した結果、木の家の調湿、睡眠、香り、触り心地、などの効果が明らかになったそうです(参考文献1)。
■木の家に関する取り組み
木造建築や木の家に住むことを推進する取り組みは全国で行われています。例えば、国レベルでは、地元の木を用いて家を建てる地産地消の活動や古民家再生に加え、人材育成、地域の活性化など多様な視点が組み込まれています。また、建築基準法の改正により、一定の耐火性能を確保できれば、木造の高層建築物も認められるようになりました(参考文献2)。
■木の家が教えてくれること
木の家は住む人に様々な場面で色々なことを教えてくれます。例えば、無垢材を使う場合には、設計の段階では、素人でも施主として梁や柱に使う木の種類や寸法などを木の特性などを考慮して設計士と一緒に決める場合もあります。また、建てる時には、一本一本の木の個性を読む大工さんの技は勉強になります。住み始めてからも、四季の変化による木の表情の違い、経年とともに変わっていく色合い、自然乾燥の梁から聞こえる木の乾く音など、住む人に自然との関わりを気づかせてくれます。一方、無垢材の欠点ともいえる狂いや不均一性を補う集成材の開発も進み、木造建築の自由度が広がっています。このような、木材の活用の場を広げる技術開発も忘れてはいけません。
ところで、筆者が聞いた話ですが、築100年の家を移築する際、梁に使っていたカラマツを外したところ、100年間の拘束から解き放たれたカラマツは、一気にねじれが増したそうです。時代を超える木の力が伝わってくるエピソードですね。
■まとめ
今月は、木の家について考えてみました。知人の大工さんから、地元の木や土を使う新築の家は、数年に1件ほどという話を聞いたことがあります。また、蔵や古民家が減るなか、職人の技の継承も課題となっています。ここで紹介した国の取り組みが実を結び技術が継承されていくことを希望します。近年、環境に配慮した家として、ゼロ・エミッション(エネルギー)・ハウスという概念も出てきています。このような家は、最新の技術を導入した高気密・高断熱、かつ、エネルギー管理を行う場合が多いですが、是非、木の良さも考慮してはどうでしょうか。
参考文献1:西日本新聞朝刊, 「木の家 睡眠の質高く 産学で立証実験 調湿、香りが効果(2016年2月17日)」, 西日本新聞ホームページ(2016年2月20日参照)
http://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/225108
参考文献2:林野庁, 「木のまち・木のいえづくり」, 林野庁ホームページ(2016年2月20日参照)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/kinoie.html
バックナンバー
バックナンバーは
こちらから