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Forest Instructor Association of Japan

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2016年4月 捕獲されたシカの活用について考える

山梨県が捕獲シカ肉の認証制度の検討を始めるそうです(参考文献1)。そこで今回は、捕獲されたシカの活用について考えてみたいと思います。

■山梨県の認証制度
山梨県では、ニホンジカによる農作物や高山植物への被害への対策として捕獲目標を設定し、捕獲したシカの肉に対して一定の衛生基準を満たした施設で処理された肉を認証し、特産品として首都圏への販売などを目指していくそうです(参考文献1)。

■全国にみられる同様の取り組み
シカなどの野生動物の増加の問題は全国にみられ、国や自治体でも様々な取り組みを進めてきています。各自治体では捕獲数に目標を定める場合も多く、全国のシカ捕獲数は平成に入ってから急増しています(参考文献2)。シカ肉の認証制度は、捕獲したシカを貴重な資源として活かすための仕組みの一つです。関係する取り組みとして、北海道ではエゾシカ肉の衛生処理に関するマニュアルを平成18年には作成しており、平成27年に改訂しています(参考文献3)。農林水産省では平成20年に作成した野生鳥獣被害防止マニュアルのなかで、肉を利活用する上での留意点などを示したうえで、課題として、安全の確保、安定供給、普及啓発、を提示しています(参考文献4)。長野県でも平成26年に認証制度を導入しています(参考文献5)。

■捕獲したシカを資源として活かすためには
しかし、シカの処理方法などの野生動物との付き合い方を熟知した猟師は減り続けており、特に次の世代を担う若手が少ない状況です(参考文献6)。上述のように国や自治体はマニュアル整備などの対策を進めていますが、農林水産省が指摘しているとおり、シカ肉の安定供給の維持は大きな課題であると思います。安定供給の維持には、猟師が減る中、捕獲や処理に従事する人材確保に加え、野生動物ゆえの品質的バラツキへの対応なども必要になると思われます。これらはシカ肉のコスト増に繋がるものであり、認証肉のブランド価値を市場に理解してもらい、その価値を維持するための、取り組みが必要になります。

■まとめ
今月は、シカ肉の認証制度について少し考えてみました。野生のシカは越県する場合もありますので、関係自治体が連携しながら、ブランド価値を持つシカ肉が市場に受け入れられ続ける仕組みができると良いと思います。また、ブランド肉の価値を知ってもらうには、自然界で起きていることを、森とは関係のない一般消費者によく理解してもらう必要があります。私たち森林インストラクターも狩猟や捕獲の現状や捕獲された動物のその後の対処方法、などについて情報を発信していきたいと思います。

参考文献1:NHK首都圏ニュース, 「捕獲シカ肉の認証制度検討へ(2016年3月13日)」

参考文献2:農林水産省, 「野生鳥獣被害防止マニュアル−イノシシ、シカ、サル、カラス(捕獲編)−第3章 鳥獣種別の捕獲方法」, 農林水産省ホームページ(2016年3月24日参照)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_manual/h21_03/pdf/data3-1.pdf

参考文献3:北海道, 「エゾシカ衛生処理マニュアル」, 北海道ホームページ(2016年3月24日参照)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/est/ezosikamanualkaitei.htm

参考文献4:農林水産省, 「野生鳥獣被害防止マニュアル−イノシシ、シカ、サル、カラス(捕獲編)− 第4章 イノシシとシカの利活用」, 農林水産省ホームページ(2016年3月24日参照)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_manual/h21_03/pdf/data4.pdf

参考文献5:長野県, 「信州産シカ肉認証制度」, 長野県ホームページ(2016年3月24日参照)
http://www.pref.nagano.lg.jp/yasei/sangyo/brand/gibier/documents/01gibier-ninshou.pdf

参考文献6:環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室, 「狩猟者・捕獲数等の推移等」, 環境省ホームページ(2016年3月24日参照)
https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/menkyo.pdf



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