今月は木材を成型したペレットを燃料に使う「ペレットストーブ」の普及に関するニュースを取り上げ、身近なバイオマス燃料について考察してみたいと思います。
■ペレットストーブの補助制度
秋田県と県内7市町村では、ペレットストーブの利用拡大による環境負荷軽減と林業者の所得向上を狙い、県産材を使った住宅や木材を燃料にするストーブの購入補助を昨年度から始めているそうです。同県では6社がペレットの製造と販売を行い昨年度は約4,700トンを出荷したが、同県内消費量は約1,600トンで、生産能力には余裕があるとのことです(参考文献1)。また、全国ではペレットや薪の生産量は増加傾向にあり、秋田県のようなストーブの購入に対する助成制度は全国各地でなされています(参考文献2)。
■CO2削減が期待される一方、配慮も必要
ペレットは間伐材やおがくずを圧縮して直径数ミリの円筒状にした固形燃料で、廃棄物を減らせる上、燃焼時に発生する二酸化炭素は木が成長時に吸収したもので新たなCO2の発生はありません(電気の使用に伴うCO2発生は除く)(参考文献1)。一方、木質系バイオマスストーブ燃焼時のCO2以外の大気放出物質による近隣への影響や火災などへの配慮も必要であり、その留意点などは環境省がガイドブックを作成しています(参考文献3)。
■地域で知恵を出し合う必要がある木質系バイオマス
パリ議定書の批准国も増えるなか、地球温暖化対策は待ったなしであり、ペレットストーブへの関心も高まると思われます。家庭で使うチップや薪は身近な存在です。上述のガイドブックに記載されている近所への配慮は重要になります。加えてペレットなどの燃料供給による地域の経済循環は一層重要になり、秋田県など自治体の取り組みは、そのきっかけをつくり仕組みとして意味があるものです。将来的には、補助がなくても経済が回るよう、燃料供給に加え、灰などの廃棄、ストーブの更新など、広い範囲で地域の多くの関係者が納得して活性化していくよう、知恵を出し合うことが大切だと思います。
■まとめ
知恵を出し合うにはまずはタイムリーな情報が大切です。長野県の森林インストラクターの絹川さんはペレットストーブ導入におけるご自身の経験を「市民の森ながの」に寄稿し、Webで公開されています(参考文献4)。このような情報をそれぞれの地域で共有し、更なる改善を図っていくことが重要ではないでしょうか。最近では、薪も燃やすことができ、電気を使わない運用ができるペレットストーブも出てきました。災害時には有効な暖房器具となります。災害リスクの抑制という視点も重要ですね。ちなみに、地元の森林からの燃料使用により手つかずの人工林に人の手が入ることで、森林が元気になり土砂流出などのリスクが減るという2重の効果があるかもしれません。
参考文献1:河北新報OnlineNews「<ペレットストーブ>林業県秋田 普及へ熱く(2016年10月12日)」(2016年10月22日閲覧)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201610/20161012_41002.html
参考文献2:林野庁ホームページ「広がっています木質ペレットストーブ・薪ストーブのある生活」、林野 2013.12 No.81、(2016年10月23日閲覧)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/pdf/rinya_no81_p12_13.pdf
参考文献3:環境省ホームページ「木質バイオマスストーブ環境ガイドブック」、平成24年度木質バイオマスを燃料とするストーブの大気環境に係る調査検討会、(2016年10月23日閲覧)
https://www.env.go.jp/air/info/biomass-stove.pdf
参考文献4:市民の森ながの「ペレットストーブ導入顛末記(2012年4月1日)」(2016年10月23日閲覧)
http://siminnomori.nagano-ep.net/wp/wp-content/uploads/2015/10/peretto-tenmatu.pdf
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