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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2017年2月 屋敷林について考える 

今月は仙台の屋敷林の存続に関するニュース記事から、屋敷林がもたらす効用について考えてみたいと思います。

■仙台の屋敷林「居久根(いぐね)」
仙台の屋敷林を指す居久根は江戸時代の仙台藩の保護政策依頼、維持管理されてきました。しかし、エネルギー源が電気やガスになり、高齢化や核家族化により管理者の負担が増え、そこに、東日本大震災の津波の被害が重なり、居久根の維持が大変に難しくなっているそうです。そこで、2013年からはNPO法人の都市デザインワークスが「次代につなぐ居久根のある景観づくり」を目標に、今の生活に合った居久根を模索しているとのことです(参考文献1)。

■屋敷林の状況
屋敷林は家屋の周囲に防風林などとして植樹されたもので、仙台のほかにも、富山県の砺波平野、長野県の安曇野などが有名です。また、その数は全国的に減っていますが、特に経済成長が著しい昭和の時代に多くが減っているようです。例えば、東京都(島しょ部を除く)では屋敷林を含む半自然表土地の減少は1945年~1960年に多く(参考文献2)、つくば市では建物の新築増築期の1960年~1980年に減少しているそうです(参考文献3)。

■屋敷林の効用と都市住民の意識
屋敷林の効用は、防風、防音、肥料や燃料の供給、日射の遮蔽などに加え、鳥類の生息地や越冬地など多様です。また、平成25年に行われた杉並区民のアンケートでは、屋敷林の重要な役割として、①景観創出、②生物の生息環境、③ヒートアイランド現象の緩和、④清浄な空気の供給、⑤延焼防止、⑥市街地の過密化緩和のオープンスペース、⑦集中豪雨時の浸水対策、が指摘されています(筆者にて表現を簡素化)(参考文献4)。この回答のなかで①、③、④、⑥、⑦などは、現在の都市部の住居環境が有する課題が反映されているように思われます。森林との接点が少ない都市において、屋敷林の重要性が再認識されているのかもしれません。興味深いものです。

■屋敷林と地域コミュニティ
杉並区のアンケートでは、多くの区民が屋敷林の消失に危機感をいだき、区民共有の資産であると感じているそうです(参考文献4)。また、つくば市の調査では屋敷林の維持には地域住民の連携が重要であると指摘しています(参考文献3)。地域コミュニティの大切さが指摘されるなか、屋敷林を地域の共有資産と捉えて地域のつながりが回復するとよいですね。また、屋敷林をESD(森林環境教育と持続可能な開発のための教育)に活用する提案もなされています(参考文献5)。ESDには(一社)森林インストラクター協会も取り組んでおり、少しでもお手伝いができればよいと思います。

参考文献1:読売新聞YOMIURI ONLINE 「減少に津波が追い打ち屋敷林…維持、地道に続く(2017年01月15日)」(2017年1月22日閲覧)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000305/20170114-OYT1T50036.html

参考文献2:環境省「昭和56年環境白書 第2節 4 自然改変の推移」(2017年1月22日閲覧)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun.php3?kid=156&bflg=1&serial=3672

参考文献3:小森美咲、村上暁信 「屋敷林の変遷と民家の空間構成に関する研究 つくば市洞下集落を事例に」、日本都市計画学会、都市計画論文集Vol. 48 (2013) No. 3, pp.363-368、 (2017年1月22日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/48/3/48_363/_pdf

参考文献4:杉並区区政モニターアンケート 「屋敷林と農地の保全について(平成 25 年 10 月 9 日~10 月 25 日)」, (2017年1月22日閲覧)
http://www.mlit.go.jp/common/001059754.pdf

参考文献5:平吹喜彦、福岡公平、福田明子、荒木祐二 「いちばん身近な森・屋敷林でESD: 景観生態学的な評価と体験学習プログラムの開発」、第119回日本森林学会大会、セッションID: M13、(2017年1月22日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/119/0/119_0_263/_pdf


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