岩手県庁前のヒマラヤスギがすべて伐採されるそうです(参考文献1)。そこで、今月はヒマラヤスギ伐採について考えてみたいと思います。
■岩手県庁前のヒマラヤスギ
岩手県庁前の内丸緑地のヒマラヤスギ全41本の伐採が10月に始まるとのことです。対象となるヒマラヤスギの樹齢は50年ほどで、高さは25メートルを超えており、2015年度の樹勢診断で今後10年以内に強風で倒木の危険があると指摘されたことを受けた処置とのこと。伐採後は木材チップにして再利用するそうです(参考文献1)。
■ヒマラヤスギとは
ヒマラヤスギはヒマラヤ西部からアフガニスタンを原産とし、パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州では標高1000m~4000mに分布しています(参考文献2)。岩場の斜面や河原のような乾燥して痩せた土地に多くみられるそうです(参考文献3)。マツの仲間で、高さ50m、原産地での樹齢は300年以上とも言われています。日本には明治初期に導入されました。
■日本におけるヒマラヤスギ
日本ではヒマラヤスギが街中に植えられることも多く、町のシンボルツリーとなり再開発時などに伐採の是非が問われるケースもあるようです。一方、今回の事例のように倒木と可能性を指摘され伐採に至ることもあります。岩手県の調査報告書によると、ヒマラヤスギは根が浅いことに加え、内丸緑地では密生して植えられたことも倒木の危険性を高めているようです(参考文献4)。同報告書にも記述がありますが、日本のヒマラヤスギの寿命は原産地に比べてかなり短い傾向があります。原産地の気候は日本に比べ降雨量が少ない乾燥地帯に属します。乾燥した固い土や岩場では根は浅くても広くがっちりと木を支えることができる一方、降雨量が多い日本の肥沃でやわらかい土では浅く張った根は本来の力を発揮できていないと考えることはできないでしょうか。加えて、都市部では広く横に根を張ることも難しそうです。
■まとめ
今月はヒマラヤスギの伐採を事例に原産地と日本の気候や土壌などの生育条件の違いによる課題について少し触れてみました。街路樹などには外来の樹種も多く、この様な事例は他の木にもみられそうですね。地中に隠れている木の根の様子にも注意を払う必要があると思います。
参考文献1:河北新報ONLINE NEWS「岩手県庁前のヒマラヤスギ、10月から41本全て伐採 景観親しまれるも倒木の危険(2018年09月13日)」(2018年9月15日閲覧)
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201809/20180913_31040.html
参考文献2:社団法人環境協力センター「21世紀初頭における環境・開発統合支援戦略策定(国別調査)-パキスタン・イスラム共和国(平成16年3月)」(2018年9月17日閲覧)
https://www.env.go.jp/earth/coop/coop/document/c_report/pakistan_h15/japanese/pdf/000.pdf
参考文献3:一般社団法人岩手県建設業協会 いわけんブログ「風景と樹木 第19話「ヒマラヤスギ」(2011年12月27日)」(2018年9月17日閲覧)
http://www.iwaken.or.jp/info/2011/12/27_1831.html
参考文献4:岩手県県土整備部都市計画課「内丸緑地のヒマラヤスギについて(平成 29 年4月)」(2018年9月17日閲覧)
https://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/054/398/public.pdf
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