8月に各地で見られる祭りには自然とのつながりが見られます。代表的な祭りを事例とした自然とのつながりについては、2015年8月のこのコーナーで考察しました。そこで、今回は人々の生活に比較的身近なお盆の迎え火と送り火を取り上げてみたいと思います。
■迎え火と送り火
一般的に各家庭では8月13日の夕刻に迎え火として盆提灯に火を灯して家の玄関先か門口に飾り、16日には送り火としておがら(皮をはいだ麻の茎)や提灯を焼きます。大文字焼きで有名な京都の五山の送り火もありますね。迎え火と送り火は先祖の霊魂のための乗り物である精霊馬(しょうりょううま)の目印とされています(参考文献1)。
■焚く木
迎え火や送り火で燃やすものには、おがら、稲わら、松(または松の根)などが一般的ですが、長野など一部の地域では白樺(または白樺の皮)も使います。松と白樺はともに、燃えやすい木で、ストーブの焚き付けなどにも向いています。松は正月の飾りなどにも使われる親しみのある木で、燃えやすいという特性と相まって使われてきたのかもしれません。
■白樺と人との関わり
他方、白樺は北海道や標高のある高原や避暑地に多く見られ、その樹液に含まれるキシリトールもよく知られています。また、高原のパン屋さんでは春には樹液を使ったパンを販売するなど、白樺はリゾートの場所にある木というイメージもあります。その一方で、樹皮が白く文字を記録に残すことができるということもあり、北東アジアを中心に白樺は様々な場面で利用されていたそうです(参考文献2、参考文献3)。崇拝や信仰の場面でも多く利用されており、心の拠り所となるような木であったのかもしれませんね。
■まとめ
今回は送り火と迎え火の話題から白樺と人との関わりについて少し触れてみました。白樺はフィンランドでは国を代表する木の一つでもあります。また、フィンランドにはコッコと呼ばれるかがり火を焚いて一年の安泰を祈る夏至祭りもあります。迎え火や送り火と似たところがあるのかもしれませんね。
参考文献1:JR東海Japan Highlights Travel「その地に残る風習や文化の象徴、それがニッポンの祭り(2015年6月10日)」(2019年7月20日閲覧)
https://japan-highlightstravel.com/jp/themes/201506/
参考文献2:井上治,「東北アジアの白樺樹皮文化」, 北東アジア研究 第22 号, 島根大学, 2012年3月, (2019年7月20日閲覧)
http://hamada.u-shimane.ac.jp/research/organization/near/41kenkyu/kenkyu22.data/Inoue_Osamu.pdf
参考文献3:NPO(特定非営利活動)法人 地球ことば村・世界言語博物館「白樺 (樹皮紙 1)(2019年6月20日)」(2019年7月20日閲覧)
http://www.chikyukotobamura.org/muse/wr_material_1.html
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