今月はマダニ感染症増加のニュースを取り上げました。このコーナーではマダニに関して2015年5月に「ダニとの共存」というタイトルで、自然界におけるダニの役割について触れましたが、再度考えてみたいと思います。
■増加するマダニ感染症
国立感染症研究所の発表によりますと、マダニが媒介する致死率の高い感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の2019年の感染者の報告者数が初めて100人に達したそうです(参考文献1)。同様に感染症の「日本紅斑熱」も増加傾向にあり、2016年には276例の患者が報告されています(参考文献2)。
■マダニ対策
2015年のこのコーナーでも触れましたが、野外活動でのマダニ対策は、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用して肌を露出しないことが基本です。加えて「ダニ忌避剤の使用」、「作業後の入浴による付着ダニの注意深い除去」も行いましょう。もし、マダニに刺されている場合は医療機関を訪ねてください。マダニは口器が長く皮膚に深く刺咬するので、素人では除去できない恐れがあります(参考文献3、4)。
■より身近な存在になりつつあるマダニ
マダニの被害は西日本に多くみられますが、その地域は拡大しています。ここにも温暖化による気候変動の影響が出ているのかもしれません。マダニの被害を受ける場所は、海岸部、民家の裏庭、田畑、あぜ道、河川敷、公園などとされ、より身近な存在であるといえます。加えて、東京都健康安全研究センターの調査では、冬の12月や2月に生息が確認されています(参考文献5)。マダニの活動が弱い冬であっても気は抜けません。
■まとめ
今月はマダニの感染症が私たちの日々の生活に身近な問題で、冬も注意が必要であることに触れました。2015年のこのコーナーではマダニをテーマにしまたが、この3年の間にもマダニの影響は予想を超えて広がっている気がします。温暖化や気候変動が進む中、私たちはマダニも含む自然界の変化をしっかりと感じ取ることが大切ではないかと感じました。
参考文献1: 日本経済新聞「マダニ感染症が100人 過去最多、高い致死率(2019年12月17日)」(2019年11月21日閲覧)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53465030X11C19A2CR8000/
参考文献2:国立感染症研究所「つつが虫病・日本紅斑熱 2007~2016年」 (2019年12月21日閲覧)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/tsutsugamushi-m/tsutsugamushi-iasrtpc/7324-448t.html
参考文献3:国立感染症研究所「マダニ対策、今できること」(2019年12月21日閲覧)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/2287-ent/3964-madanitaisaku.html
参考文献4:厚生労働省ホームページ「ダニ媒介感染症」(2019年12月21日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html
参考文献5:東京都健康安全研究センター「マダニにご注意!~マダニQ&A~」(2019年12月21日閲覧)
http://www.tokyo-eiken.go.jp/kj_kankyo/madani/
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