スキー場閉鎖のニュースがありましたので、閉鎖後の跡地について少し考えてみたいと思います。
■増えつつあるスキー場の閉鎖
長野県の飯綱高原スキー場が今シーズン限りで閉鎖になり、跡地は植林して森林に戻す計画とのことです(参考文献1)。近年、スキー場の経営悪化にともなう再生や閉鎖の事例は増加傾向にあり、飯綱高原のように森林に戻すケースも複数みられます(参考文献2、3、4)。
■スキー場跡地の植林
森林に戻す場合には、民法や自然公園法や自治体の条例により、植林や索道施設の撤去等により原状回復する義務を伴う場合が多く、植林のための事前の資金確保や、地域経済ダメージの最小化の施策が求められています(参考文献3、4)。
■スキー場跡地を価値あるものに
東北森林管理局はスキー場跡地の植林後の状況を調査し、天然更新による再生や長期の継続的な森づくりにむけた課題などを示しています。特に、人工林の皆伐作業が少ない傾向にあるため、森づくりプロセスへの地域住民の関わり可能性を指摘しています(参考文献5)。森林の多様な価値を認識したうえで、50年から100年先を見据えた森づくりに、地域住民に加えて例えば都市住民も参加するような面的広がりを持った展開も考えられます。更に、植林するだけでなく、その後のプロセスに継続的に関わることができ、体験しながら森林や自然を学ぶ場として、スキー場に変わる新しい価値ある場所になると良いですね。
■まとめ
今月はスキー場跡地を森林に再生する事例に基づいてその在り方について少し考察してみました。参考文献3や4にも記載がある通りスキー場の跡地利用には森林再生以外にも様々な取り組みがあります。スキー場跡地が自然界のサイクルに戻りながら、経済面でも自立できる新しい価値ある場所に生まれ変わると良いのですが。
参考文献1:NHK NEWS WEB「飯綱高原スキー場今季限りで閉鎖(2020年1月7日)」(2020年1月15日閲覧)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/20200107/1010012060.html
参考文献2:土屋 良泰, 大沢 昌玄, 三友 奈々, 「スキー場廃止実態に関する基礎的研究」, 土木学会土木計画学研究・講演集Vol.50, (2014)
参考文献3:観光庁「スノーリゾート地域の活性化に向けたアクションプログラム2018総括資料 平成31年3月15日」 (2020年1月15日閲覧)
https://www.mlit.go.jp/common/001280425.pdf
参考文献4:スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会「最終報告~世界に誇れるスノーリゾートを目指して~ 平成29 年4 月28 日」 (2020年1月18日閲覧)
https://www.mlit.go.jp/common/001184793.pdf
参考文献5:松橋良之「スキー場跡地の森林再生について」, 林野庁, (2020年1月15日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kensyuu/pdf/matsuhashi.pdf
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