マツタケが絶滅危惧種に指定されました。そこで、今月はマツタケが育つ環境について少し考えてみたいと思います。
■マツタケが絶滅危惧種に
国際自然保護連合(IUCN)が公表した世界の絶滅危惧種をまとめたレッドリストにマツタケが指定されました。絶滅危惧種は絶滅の危険性が高い順に3段階に分かれていて、このうちマツタケは3番目の「危急」に分類されました。マツタケが分布するアジアからヨーロッパで伐採や松枯れなどで松林が減少しマツタケの生育量が減っているとのことです(参考文献1)。
■マツタケが育つ環境
キノコにはシイタケのように倒木などを栄養源とする腐生性のキノコと、生きた木に共生する菌根性のキノコがあります。マツタケは後者でアカマツの根に共生するため、アカマツがなくてはなりません。ではアカマツはどのような環境に育つのでしょう。
アカマツは日当たりが良く栄養分が少ない土壌でもよく耐えて育ち、岩場などでもよく見られます。しかし、土壌が豊かになっていくと他の樹種が勢いを増し、アカマツは衰退していきます。このようにアカマツは自然界の樹種の移り変わり中では最初に現れる代表的な木とされています。
■人の森とのかかわり
絶滅危惧種になってしまう要因は自然破壊によると思われがちですが、樹種が移り変わる途中段階に生存するアカマツと共存するマツタケの場合、そう単純ではないかもしれません。特に日本の里山では、薪を採るなど適度に森を活用することでアカマツが育ちやすい環境が継続的に維持されてきたと考えられます。しかし、人が森に入らなくなってアカマツが育ちやすい環境が減ってきたところに松枯れの被害が加わり、アカマツにとって厳しい環境になってしまった考えることができます。マツタケの減少の一因に人と自然とのかかわりが減ったことがあることも忘れてはならないと思います。
■まとめ
マツタケは絶滅危惧種の指定を受けましたが、日本では採取や食べることは従来通り続けてよいとしています(参考文献2)。マツタケが自生している地域の人たちはその場所をひけらかすことはせず、大切に維持管理しているという話を耳にしたことがあります。今回のニュースがマツタケを末永く味わうことができる環境を維持・管理する仕組みを再構築するきっかけになると良いと思います。
参考文献1:科学技術振興機構サイエンスポータル ニュース速報「キツネザルやマツタケなどが絶滅危惧種に IUCNが最新のレッドリスト公表(2020年7月13日)」(2020年7月20日閲覧)
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/07/20200713_01.html
参考文献2:NHK News Web「マツタケ絶滅危惧種に指定 農相『持続可能性を追求』(2020年7月10日)」(2020年7月24日閲覧)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200710/k10012507941000.html
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