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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2021年6月 低炭素社会と林業

今月はフランスが低炭素社会の実現に向け林業を重要分野と位置付けるというニュース記事がありましたので、低炭素社会と林業のかかわりについて考えてみたいと思います。

■フランスや海外の取り組み
フランスでは林業を低炭素社会の重要分野と位置付け、2018年に定めた林業戦略協定を今年4月に更新し、林業に関する活動を加速させるそうです。具体的には、新築建物に対する環境規則(RE2020)に関して木材や生物由来の素材の活用促進、中小林業の促進と財政支援強化、木質製品と木質建築システムの開発助成などです。また、RE2020では林業側で訓練、製品開発、植林・再植林、素材混合建築の推進、コスト削減、リサイクルなどの計画を策定します(参考文献1)。フランス以外の主要先進国も低炭素化に向け森林整備や林業を重要視しています。ドイツは廃棄物系バイオマスのエネルギー利用と森林の吸収源効果の維持・向上、英国や米国は森林の拡大、カナダは森林の管理強化などです(参考文献2)。

■日本の取り組み
日本でも低炭素社会の実現に向けて森林の適切な維持管理、木材の活用推進や林業育成などを進めています。森林・林業白書では森林の多面的機能をSDGsに照らし合わせ、①森林経営管理制度と森林環境譲与税の開始、国有林野管理経営法の改正、②中高層建築物等の木造化・木質化、③人財育成やICTなどを活用した林業イノベーション、など木材の安定供給や林業の活性化の必要性を指摘しています(参考文献3)。このコーナーでも木造建築の取り組みを紹介してきました(五輪設備(2019年5月、2018年7月)、木都構想(2018年8月)、高層建築(2018年3月)、ガソリンスタンド(2017年11月)など)。

■持続可能な循環
低炭素社会の実現に向け林業に注目が集まる中、持続可能な活動に繋げていくために大切なことは伐採後の取り組みになります。現在、日本の森林では伐採後の造林が3~4割程度と少なく、適切な更新の必要性が指摘されています(参考文献4)。フランスでも再植林を指摘しています。また、地形が南北に長く植生が豊かな日本は、伐採した後をどのような森にしていくかをよく考え、各地域に適した最新の科学的知見を加えた伐採方法やそのタイミングを決めていくことが大切です。日本にある先人たちの経験に基づく森を育む知見と統合していくとよいですね。

■まとめ
日本政府は今年4月の気候変動サミットで、温室効果ガスの排出量を2030年度には2013年度から46%削減を目指すことを打ち出しています。この実現には、グローバルな視野で従来の価値観を変えていく必要があります。持続的に森林を維持していく林業の知恵が注目されるとよいと思います。フランスは林業戦略協定をたった2年で更新しています。価値観を大きく変えるには、このようなスピード感も必要なのかもしれません。


参考文献1:EICネット環境ニュース「フランス、林業を低炭素社会への重要分野として新施策を展開(2021/5/11)」(2021年5月13日閲覧)
https://eic.or.jp/news/?act=view&word=&category=&oversea=1&serial=45294

参考文献2:林野庁「各国の長期戦略の概要について 長期低炭素ビジョン小委員会(第20回)(2017/12/19)」(2021年5月15日閲覧)
https://www.env.go.jp/seisaku/list/ondanka/plan_03.pdf

参考文献3:環境省「森林・林業白書(令和元年度)」(2021年5月15日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r1hakusyo/zenbun.html

参考文献4:林野庁「新たな森林・林業基本計画に 向けた検討状況Part1」林野, 2021.2, No.167, (2021年5月24日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/attach/pdf/0302-7.pdf





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