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Forest Instructor Association of Japan

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2022年4月 外来種問題と環境保全活動

外来種に関する法律「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」の改正案が閣議決定されました。このコーナーでは外来種に関しアライグマ(2018年11月)、ヌートリア(2017年6月)を取り上げています。今回は少し視点を変えて環境保全活動との関わりについて考えてみたいと思います。

■ヒアリやアメリカザリガニを対象に
今回取り上げた法律は外来生物対策の強化・推進による安全・安心な国民生活の実現と生態系保全等の推進を目的としています。改正のポイントは強い毒を持つヒアリへの対策強化と生態系影響が懸念されるアメリカザリガニやアカミミガメなどへの円滑な対応です(参考文献1)。

■子供たちに身近であった生き物たち
ここでは後者のアメリカザリガニやアカミミガメについて考えてみます。どちらも昔は子供たちに身近な生き物でした。近所の池でアメリカザリガニ釣りを楽しんだり、アカミミガメ(通称ミドリガメ)は簡単に飼ことができました。今は飼育している個体は野外に放さず最後まで飼育することが呼び掛けられています(参考文献2)。

■環境保全活動における留意点
このような身近な生物は子供たちの環境学習の題材に適しているかもしれません。ところで、外来種の駆除に加えてよく行われるのが在来種を自然界に放す環境保全活動です。ところがここでは放流したり植樹したりする個体の地域への適合性に注意を払う必要性があります。ゲンジボタルの放流を事例とした研究があり、ゲンジボタルの関東型と関西型の遺伝子レベル違いが引き起こす問題への気づきを環境教育の現場で得るための工夫を実践的に検証しています(参考文献3)。イワナやヤマメなども川ごとに固有の型が存在しますし、木の実も過去に人為的に移植などしていない場合は地域固有の特徴があるとされています。外来種問題や生態系の回復への取り組みにあたっては、このような遺伝子レベルで問題なども共有しながら、地域に応じた合理的な取り組みが行われると良いですね。

■まとめ
これまでは日本における外来種の問題を話題にしてきましたが、日本の固有種が海外で迷惑をかけている場合もあります。例えば、イタドリ、クズ、ワカメ、マメコガネ(参考文献4)、更に国際自然保護連合のリストにはコイ、ヒトスジシマカ、マイマイガなども見られます(参考文献5)。外来種問題はグローバルな視野も持ちつつ、遺伝子レベルの視点からの配慮も必要であり、なかなか難しい問題ですね。

参考文献1:環境省報道発表資料「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について(2022/3/1)」(2022年3月16日閲覧)
https://www.env.go.jp/press/110649.html

参考文献2:環境省ホームページ「日本の外来種対策-外来種問題を考える」(2022年3月17日閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/index.html#chumoku

参考文献3:山野井ほか「ゲンジボタルの国内外来種問題を通して生物多様性の保全について考える授業の開発」日本環境教育学会、環境教育VOL. 25-3(2016)(2022年3月17日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoee/25/3/25_3_75/_pdf

参考文献4:環境省、農林水産省、国土交通省「外来種被害防止行動計画~生物多様性条約・愛知目標の達成に向けて~平成27年3月2 日」(2021年3月17日閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/actionplan/actionplan.pdf

参考文献5:環境省ホームページ「世要注意外来生物リスト」(2021年3月17日閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist.html



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