先月に続き森林の二酸化炭素(CO2)吸収に関する話題です。スギの森林のCO2と水蒸気(H2O)の移動に関する研究から、森林や木のCO2吸収量が示されることについて考えてみたいと思います。
■スギの森林でCO2やH2Oの移動を計測
大気とスギの森林の間でCO2とH2Oの移動量を計測し、一枚の葉の振る舞いとその集まりからなる森林の上空の移動に関する調査研究が行われ、年間を通したCO2やH2Oの変化から常緑であっても季節の影響が見られ、特に光合成が減る冬場はCO2の吸収量も少なくなっています(参考文献1)。
■調査が進む森林のCO2吸収の仕組み
森林のCO2吸収量は成長が早い若い木は多く、樹種による違いも見られ、吸収量の算定でもそれらを考慮しています(参考文献2)。また、常緑針葉樹林は上述のスギの例からも冬もCO2 を吸収する一方、夏は落葉広葉樹林程の効果はなく、年間を通すと両者のCO2 吸収量は近いという研究成果も見られます(参考文献3)。このように樹林によるCO2の吸収の仕組みは様々な視点で調査が進んでいます。
■CO2の吸収に関する研究は健全な森の尺度とも
森林のCO2吸収量の計算には幹の成長量が用いられるように(参考文献2)、森林のCO2の吸収は個々の樹木の成長と密接に関係します。参考文献1のような一枚の葉から森林全体までを広くとらえたCO2の吸収に関する研究は、一つ一つの木から森林全体を俯瞰してその健全性をみる尺度になるかもしれませんね。
■まとめ
健全な森林はCO2の効率的な吸収だけでなく多面的な価値を我々に提供してくれます(参考文献4)。その意味からも森林のCO2吸収に多くの皆さんが関心を持つようになり、健全な森が増えると良いと思います。ちなみに1世帯の年間CO2排出量は36~40年生のスギ約15本が貯蓄量と同程度で、40年生のスギ509本分の年間吸収量に相当するそうです(参考文献5)。
参考文献1:東京大学大学院農学生命科学研究科·農学部「スギ林は30分ごとに、しかも1年で、どんだけ二酸化炭素を吸ってるのか(2023/1/11)」(2023年3月11日閲覧)
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20230309-1.html
参考文献2:林野庁ホームページ「森林の地球温暖化防止機能について」(2023年3月20日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/con_5.html
参考文献3:山野井克己ら「森林観測ネットワークで気候変動の影響を探る-タワーを用いた二酸化炭素吸収量(CO2)の把握-(平成24年)」森林総合研究所、平成 24 年度研究成果選集(2023年3月19日閲覧)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p30-31.pdf
参考文献4:林野庁ホームページ「森林の有する多面的機能」(2023年3月20日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/tamenteki/con_1.html
参考文献5:林野庁ホームページ「森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?」(2023年3月19日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/20141113_topics2_2.html
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