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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2023年5月 屋敷林について考える

今月は富山県砺波の屋敷林を手入れするニュースを取り上げます。

■砺波の屋敷林
富山県砺波市の散居村では「カイニョお手入れ支援隊」というボランティア団体が1人暮らしの高齢者宅の屋敷林のスギやヒバの手入れを年2回実施し、砺波平野の景観の維持に努めているそうです(参考文献1)。

■人と自然が関りながら作り出してきた景観
散居村の景観は水田を中心とした平らな農耕地域に家と屋敷林が点在する大変に美しいもので、米国のカーター元大領領は飛行機からのその眺めを「幾何学的で、かつ人間的だ」と、たたえたそうです(参考文献2)。カイニョと呼ばれる屋敷林はスギやケヤキの高木、ウメやサザンカなどの中低木からなり、家を風雨から守りつつ、燃料や材を供給する役目を担って受け継がれてきたもので、正に人と自然が関りながら築き上げてきた景色と言えます(参考文献3)。

■全国に見られる里地里山と文化的景観
カイニョのような自然に関わる文化的な景観は日本全国に身近に存在します。環境省が指定した生物多様性保全上重要な里地里山は全国500か所にのぼります(参考文献4)。文化庁でも人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された欠くことのできない景観地を文化的景観と定め、その価値の評価、継承を目指しています(参考文献5)。

■まとめ
屋敷林や里地里山などの文化的景観の維持・継承は全国的な課題で、取り組みもいろいろと始まっています。経済面だけを見ると樹木などを中心とした文化的景観の維持が難しい場合も出てしまいます。特に日本は欧米に比べると文化的な景観維持への社会的合意は得にくいように感じます。より多くの皆さんが身近な里地里山や屋敷林など経済指標では測りにくい人と自然の関りの意味を理解し、伝統的に築き上げてきた文化的な景観が維持されると良いですね。

参考文献1:北日本新聞社「屋敷林の手入れ任せて 砺波の支援隊、高齢者宅でせん定(2023/4/13)」(2023年4月15日閲覧)
https://webun.jp/articles/-/380108

参考文献2:稲本正「森の旅 森の人」世界文化社、P148、(1990)

参考文献3:石灰希ら「砺波平野の屋敷林に対する住民の認識と保全のための対応策」ランドスケープ研究81(5), 2018 (2023年4月15日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila/81/5/81_549/_pdf

参考文献4:環境省ホームページ「生物多様性保全上重要な里地里山」(2023年4月15日対応閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/satoyama/16_toyama/no16-4.html

参考文献5:文化庁ホームページ「文化的景観」(2023年4月15日閲覧)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/keikan/




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