今月はNHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎博士から植物と人の関りについて少し考えてみたいと思います。
■NHK連続テレビ小説「らんまん」
「らんまん」は明治時代に植物の研究に突き進んだ主人公・槙野万太郎(神木隆之介)と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描いたテレビ小説ですが、そのモデルは高知県出身の植物学者・牧野富太郎です(参考文献1)。
■牧野富太郎博士
牧野富太郎は独学で植物の知識を身につけ、東京大学の植物学教室に出入りを許されて、植物分類学の研究に打ち込みました。日本人として初めて学名をつけたヤマトグサをはじめ約1500種類以上の植物を命名、収集した標本は約40万枚、蔵書は約4万5千冊に及び、日本植物分類学の基礎を築いたとされています。植物を知ることの大切さを全国に伝え、「牧野日本植物図鑑」は今でも愛好家の必携の書です(参考文献2)。植物標本は東京都立大学でデータベース化され世界中の研究者に利用されています(参考文献3)。
■草木と人の関り
牧野博士は文化功労者で文化勲章も受賞されています。文化の広い意味は、「人間が自然とのかかわりや風土の中で生まれ育ち身に付けていく立ち居振る舞いや衣食住をはじめとした暮らし、生活様式、価値観など、人間と人間の生活にかかわることの総体」とのこと(参考文献4)。草木と人の関りにおいて、江戸時代は椿や菊など四季折々の花や木を鉢植えにするなどして園芸を楽しんできました(参考文献5、6)。牧野博士はこのような親しみ方に、新たに雑草と言われるような身近な多くの植物を知ることの大切さを説き、人と植物の関りを広げ、新しい文化の構築の一役を担ったと言えると思います。
■まとめ
今回は牧野博士の植物分類学における功績を少し紹介しましたが、記事を書くにあたり調べているなかで「牧野新聞」という言葉を知りました(参考文献7)。標本づくりに利用した全国各地の新聞が戦火を逃れ、その後も廃棄されることなく保管され、近代史研究の貴重な資料になっているそうです。長く保管されてきた標本が学問領域を超えた価値をもたらしているところが面白いと思いました。
参考文献1:NHK連続テレビ小説「らんまん」(2023年5月15日閲覧)
https://www.nhk.jp/p/ranman/ts/G5PRV72JMR/
参考文献2:高知県立牧野植物園「牧野富太郎」 (2023年5月13日閲覧)
https://www.makino.or.jp/dr_makino/
参考文献3:東京都立大学「牧野標本館」 (2023年5月13日閲覧)
https://www.biol.se.tmu.ac.jp/herbarium/
参考文献4:文化庁「文化を大切にする社会の構築について ~一人一人が心豊かに生きる社会を目指して」(2023年5月14日閲覧)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/sokai/sokai_2/shakaikochiku_toshin/
参考文献5:国立国会図書館「江戸時代の博物誌-独自の園芸の展開」(2023年5月16日閲覧)
https://www.ndl.go.jp/nature/cha2/index.html
参考文献6:国立国会図書館「江戸時代の博物誌-江戸時代の園芸」(2023年5月16日閲覧)
https://www.ndl.go.jp/nature/column/column_4.html
参考文献7:高知新聞Plus「明治期からの500紙以上、全国各地の歴史伝える「牧野新聞」全容調査に期待(2022/4/1)」(2023年5月19日閲覧)
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/553875
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