今年の夏は猛暑がつづき、秋の味覚であるマツタケや木の実の収穫状況が話題となりました。そこで今月は秋の味覚(作物)を振り返り、環境問題について改めて考えてみたいと思います。
■地域で情況が異なるマツタケ
絶滅危惧種に指定されたマツタケについては、2020年8月のこのコーナーで、減ってきた理由に、マツタケが育つアカマツと人の共存のバランスが崩れたところに、温暖化や松くい虫などの影響が複合的に絡んでいる可能性を指摘しました。今年も福井県ではかなり数が少ないようで、温暖化や松枯れの影響が指摘されています(参考文献1)。一方で、岩手県など影響が少ない地域もあるようです(参考文献2)。
■木の実は豊作と不作と様々
木の実はどうでしょうか。栗とリンゴを調べてみました。栗は猛暑と少雨の影響が多少はあるものの、味は良く、影響はさほど大きくはないようです(参考文献3)。リンゴに関しては、青森や長野で猛暑による果実表面の「日焼け」が多発し、影響がでています(参考文献4、5)。特に、長野県では春先の花が咲く時期の遅霜の影響も加わり不作となっています。
■秋の味覚をつかさどるキノコや木の実の出来不出来に感度を
マツタケや木の実の情況を見ますと、猛暑や遅霜など異常気象の影響が顕著で、地球温暖化の影響と危惧されます。いつでも手に入る食材は路地物と比べると多くのエネルギーを使います。このような便利な時代にこそ、季節感のある秋の味覚をつかさどるキノコや木の実の情況に感度を高くし、その背後にある環境問題を考えていきたいですね。
■まとめ
今年はクマが人里に出てくるニュースも多くみられます。食料の木の実が少ないことも理由の一つですが、耕作放棄による藪で見通しが悪くなり、人の気配を遠くから感じにくくったことも指摘されています。藪の草刈りは人々の生活が自然から遠ざかってしまったことであり、マツタケにおけるアカマツ林と人との付き合い方にも通じます。秋の味覚(作物)を振り返り、改めて自然と人との関わりに思いが寄せられると良いと思います。
参考文献1:FNNプライムオンライン「今や絶滅危惧種“マツタケ” もう食べられない? 収穫量が100分の1に…「化石燃料の増加」が絶滅を引き起こす(2023/11/13)」(2023年11月19日閲覧)
https://news.yahoo.co.jp/articles/304f7025cde9d1ca608be655b1b7f5fea03b1022
参考文献2:マイナビニュース「今年のマツタケは不作と豊作どっち? 気になる販売価格の実態は?(2023/11/8)」(2023年11月19日閲覧)
https://news.mynavi.jp/article/20231108-2812493/
参考文献3:両丹日日新聞「猛暑で甘み十分 秋の味覚・丹波くりの収穫進む(2023/10/3)」(2023年11月19日閲覧)
https://www.ryoutan.co.jp/articles/2023/10/95417/
参考文献4:読売新聞「リンゴ王国に危機、猛暑で「日焼け」が多発…「転換点が迫っている」(2023/9/15)」(2023年11月19日閲覧)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230915-OYT1T50077/
参考文献5:長野朝日放送「日焼けのリンゴが増加 記録的な猛暑・少雨が影響?(2023/10/2)」(2023年11月19日閲覧)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6394b3017c35ffeb28677f1f0c55ce7250a06c86
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