福島県西会津町のキリ林が文化財建造物の資材を供給する森に指定されるニュース記事がありました。そこで今月は文化財建造物の修復対象として代表的な屋根を題材に少し考えてみました。
■西会津のキリ林
福島県西会津町の「西会津のキリ林」が文化財建造物修理に使う資材を供給する文化庁の「ふるさと文化財の森」に選ばれたそうです。選ばれたキリ林は桐材店が所有する約2ヘクタールで、苗木生産者らでつくる会津里山森林資源育成研究会と共同で管理し、色つやが良く丈夫な会津桐が千本以上栽培されているそうです。他にも3か所が選定され「ふるさと文化財の森」は全国で92か所になりました(参考文献1)。
■ふるさと文化財の森
「ふるさと文化財の森」は文化庁が国宝や重要文化財などを修理し後世に伝えていくための木材や檜皮、茅、漆などの資材の確保と、技能者の育成を目的に設定した森林で、「ふるさと文化財の森システム推進事業」として資材採取等の研修、普及啓発事業が行われています。近畿圏では文化財構造物の約4割が植物性屋根であるなど、修理対象には屋根が多く、文化庁も植物性屋根への資材供給確保を目指しています(参考文献2、3)。
■多様な植物性屋根とその素材
植物性屋根は、こけら葺、とち葺、板葺、檜皮葺、杉皮葺、茅葺と多様でそれぞれに歴史や特徴があり、材もサワラ、スギ、ヒバ、クリ、コウヤマキ、ススキ、カリヤス、ヨシなど様々です。板葺もさらに細かく調べると釘や紐を使わない取葺があるそうです(参考文献4)。葺き方や素材が多様であることは、草木の種類が多い日本で、それぞれの個性を活かして利用してきた先人たちの工夫を感じます。例えば、こけら葺きはスギやヒノキの板材を数ミリ単位に薄く細かく仕上げて防水性と屋根の曲線美を両立するなど、美意識と材の加工に対するち密さが見られます。
■まとめ
今回は文化財建造物に活用する会津のキリ林の話題から植物性屋根の取り上げ多様な利用方法に少し触れました。紙面の都合で葺き方の特徴や違いには触れませんでしたが、調べてみてはいかがでしょう。美術工芸品も含め文化財は技術の継承が大きな課題です(参考文献5)。自然の素材を賢く利用してきた先人たちの知恵が見つめ直されると良いですね。
参考文献1:福島民報「福島県西会津町のキリ林が「文化財の森」に 国宝や重文などの建造物修理に資材供給(2024/3/14)」(2024年3月15日閲覧)
https://news.yahoo.co.jp/articles/61c14c98533bceafa0f813bb59759a7fb298b171
参考文献2:文化庁「ふるさと文化財の森システム推進事業」(2024年3月15日閲覧)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/joseishien/furusato_mori/index.html
参考文献3:「重要文化財建造物について(2008/7/14)」重要文化財建造物の総合防災対策検討会(第1回) (2024年3月17日閲覧)
https://www.bousai.go.jp/jishin/sonota/bunkaisan/pdf/080714_siryo2.pdf
参考文献4:土屋直人ら「取葺と呼ばれた板葺屋根の系譜」日本建築学会計画系論文集第59号, pp155−pp162,(2005) (2024年3月17日閲覧)
https://myoko.niye.go.jp/result/pdf/r1_10.pdf
参考文献5:文化庁「文化財の保存に関する状況について」(2024年3月17日閲覧)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/bunkazai/kikaku/r03/01/pdf/93500101_05.pdf
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