今月は落ち葉の分解に関わる微生物の研究の記事から土について少し考えてみたいと思います。
■落ち葉の効率的な分解のメカニズム
森林の土壌では、その環境に適した特有の微生物の集まり(微生物叢)が落葉を効率的に分解していることが確認され、森林保全のためには場所ごとに特有の微生物叢を保つことの重要性が示唆されたそうです(参考文献1)。
■資源循環に大切な微生物
土の中の微生物は様々で、トビムシなどの微小後生動物、ゾウリムシなどの原生動物、キノコやカビの菌類、地衣類、細菌などからなり、それぞれが様々な役割を担って自然界の物資循環の担い手となっています(参考文献2)。近年の研究では樹木の根に共生する菌根菌と呼ばれる菌類が作り出すネットワークが樹木の成長や森林の樹種構成にダイナミックに影響することも分かってきました(参考文献3)。
■土の恵み
環境白書では微生物が働く土の中では生命を巡る物質やエネルギーの大きなサイクルが繰り返されるとし、土の恵みを、(1)我々の生活を支える資源としての土、(2)水質浄化・保水等のはたらきを有する土、(3)生態系の観点から見た土(遺伝子の貯蔵庫、分解・浄化機能、土壤生物による循環)、(4)土の安定化機能、と表しています(参考文献4)。今回のニュースの話題は(3)の生態系の関係するものですが、私たちは土からもっと多くの恵みを受けているのです。
■まとめ
微生物は1グラムの土の中に細菌だけでも数億~数十億匹もいると言われています(参考文献5)。何気ない足元の気を配ってみてはどうでしょう。微生物がいないと、森はごみの山になってしまいますよね。様々な微生物が働く土の恵みを再確認し、コンクリート化の範囲も合理的に決められると良いと思います。
参考文献1:科学技術振興機構Science Portal「樹木が生息する土壌に特有の微生物が落葉を効率的に分解、東大など実証(2024/6/12)」(2024年6月14日閲覧)
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20240612_n01
参考文献2:小林達治「微生物の基礎」環境技術Vol.13, No.5, (1984) (2024年6月14日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/13/5/13_5_356/_pdf
参考文献3:科学技術振興機構Science Portal「森林生態系を支える菌根菌ネットワーク【地面の下のたからもの】(2023/6/21)」(2024年6月14日閲覧)
https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20230621_w01/
参考文献4:環境省「平成7年版環境白書(第3章次世代から見た日本の環境ストック 第1節土に見る我が国の環境)」(2024年6月15日閲覧)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h07/9608.html
参考文献5:独立行政法人農業環境技術研究所「土の中の微生物:さまざまな働きを利用する(2009/12/1)」情報:農業と環境 No.116, (2009) (2024年6月15日閲覧)
https://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/116/mgzn11610.html
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