北海道の防風林の減少のニュースから防風林について考えてみたいと思います。
■減少する北海道の防風林
北海道帯広市の農家が所有する防風林が2008年からの9年間で85キロ(28%)減少したそうです。防風林の調査では52%が利点より欠点の方が大きいと回答し、農家があげる欠点には「日陰による生産量の低下」、「畑に葉や枝が落ち、生産性悪化」、「大型機械の衛星利用測位システム(GPS)の精度低下」などが多いそうです。GPSの精度低下はスマート農業機器の普及によるもので、高さ30メートルにもなる木の枝を落とす枝払い作業の苦労も指摘されています(参考文献1)。
■北海道の防風林
北海道の防風林の歴史は開拓が進む明治時代にさかのぼり、明治30年には森林法の保安林制度の防風保安林に位置づけられました。当初は広葉樹天然林が主体でしたが、戦後に針葉樹人工林へ転換し、食糧事情等の社会情勢の変化により一部は農耕地に転用されました。防風林の効果は、①作物の生産量や品質の向上と地力低下の抑制、②地温の上昇、③水分条件の改善、などがあり、その効果の範囲は、一般に防風林の風上側で樹高の約5倍程度、風下側で樹高の20倍程度に及びます。一方で防風林の多くは戦後に植栽され世代交代の時期を迎え、その維持と更新が課題となっています(参考文献2)。
■防風林の理解とスマート農業
防風林はその町の景観を作り上げるものでもあり、地域の皆さんの財産ともいえます。農家の方に加えて地域の住民も防風林の効果を認識し、スマートな農業と防風林の在り方を地域全体で考えて合意形成ができると良いと思います。加えて、北海道のように防風林が更新時期を迎えるケースでは、植樹から育林という長期計画も地域全体で練り上げられると良いですね。
■まとめ
防風林は沿岸部分に加えて内陸にも身近に存在し、それぞれに先人たちが築き上げてきた歴史をもっています。例えば、千葉県の内陸部の防風林の歴史も北海道同様に明治時代にさかのぼります(参考文献3)。ぜひ皆さんの地元の防風林を探してみてはいかがでしょう。
参考文献1:日本農業新聞「畑を守る壮大な「防風林」激減している背景は?(2024/10/7)」(2024年10月19日閲覧)
https://news.yahoo.co.jp/articles/5d2934d6f11d237d7a97a7bf082ca314f215161c
参考文献2:林野庁「防風林の管理について」(2024年10月19日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/policy/business/moriwotukuru/attach/pdf/index-3.pdf
参考文献3:千葉県北部林業事務所「内陸防風保安林のはなし」(2024年10月20日閲覧)
https://www.pref.chiba.lg.jp/rj-hokubu/kanrika/hoan-bouhurin.html
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