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2025年1月 伝統的酒造りと自然との関わりについて考える

正月にお世話になる日本酒などの伝統的酒造りのユネスコ(国際連合教育科学文化機関)無形文化遺産登録が決まりました。そこで、今月は日本の酒造りと自然との関わりについて考えてみたいと思います。

■日本の伝統的酒造りが無形文化遺産の登録へ
ユネスコの政府間委員会は、日本酒、焼酎、泡盛などの日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録することを決めました。伝統的に培われてきた、米や麦などを蒸す、こうじ作り、もろみの発酵などの技術が各地の風土に応じて発展し、自然や気候と深く結びつきながら伝承され、儀式や祭礼行事などの日本の文化で不可欠な役割を果たしてきたことが評価されました(参考文献1)。

■自然の恵みを活用した酒造りと日本の文化への浸透
酒造りは日本の自然の恵みを上手く活かしてきました。発酵などの工程では四季が豊かな気候が大切ですし、大切な原料の水も森林が育む良質な地下水を利用します。ご存じの通り、こうじはお米から作られますし、焼酎や泡盛は芋、麦、米、そばなど身近な作物を主原料としています。こうじを使った酒造りは平安時代にさかのぼり、こうじはみそ、しょうゆ、みりんにも利用され、日本の食文化にはなくてはならないものです(参考文献2)。

■見直される酒造りと森の関り
最近では酒造りに使われる仕込み樽を昔ながらの木製に戻して理想の味を追求する動き各地であります(参考文献3)。また、養命酒の原料となるクロモジを酒屋さんが植林する例(参考文献4)、木を原料にしたお酒の開発(参考文献5)など、酒造りと森との関りが見直されています。ところで、造り酒屋の目印として有名な杉玉(すぎだま)は奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)の御神木の杉に由来し、酒造りは神事の神聖かつ重要な一部として位置づけられ、酒屋さんが杉玉を飾って酒神の御神体の一部として崇める習慣は江戸時代には全国に広がったそうです(参考文献6)。仕込み樽にも杉が良く利用されていますね。

■まとめ
今年は巳年です。蛇も日本の文化とは深い関りがあります(参考文献7)。お酒を楽しみながら、自然とともにある日本の文化を感じ取っては如何でしょう。清酒の消費量は海外で増加している一方、国内ではピークの1975年の1/4に落ち込んでいるようですが、大学での酒造りの講義や実習なども行われています(参考文献1)。今回の伝統的酒造りの無形文化遺産登録を機に、酒造りの文化が注目されると良いと思います。


参考文献1:NHK News Web「日本の「伝統的酒造り」ユネスコの無形文化遺産 登録決定(2024/12/5)」(2024年12月14日閲覧)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241205/k10014658381000.html

参考文献2:日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会「リーフレット「こうじと酒造り」ができました」(2024年12月13日閲覧)
https://note.com/koji_sakezukuri/n/n078de805065b

参考文献3:PR TIMES「次の100年も木桶仕込みのお酒を造りたい。木桶仕込み純米酒『人と木とひととき』誕生の背景vol.1 木桶が無くなる?(2021/6/9)」(2024年12月13日閲覧)
https://prtimes.jp/story/detail/WBqV4AUmZ1x

参考文献4:長野県魅力発信ブログ「養命酒製造(株)「森林の里親」森林整備活動」(2024年12月13日閲覧)
https://blog.nagano-ken.jp/kamiina/local_office/35421.html

参考文献5:国立研究開発法人森林総合研究所「木の酒について」(2024年12月13日閲覧)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kinosake/index.html

参考文献6:国税庁「『日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り』調査報告(2021年7月)」(2024年12月13日閲覧)
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/koujikin/pdf/0021012-102_01.pdf

参考文献7:遠藤 綾乃, 本田 郁子「蛇綱行事にみる龍蛇神信仰とその表現 : 関東三地域の蛇綱行事を事例として」, 日本体育学会第47回大会, 1996 (2024年12月13日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspeconf/47/0/47_651/_pdf/-char/ja



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