今月は大阪万博に期間限定で出展された「木のお酒」について少し考えてみたいと思います。
■好評だった「木のお酒」
「木のお酒」は森林総合研究所(以降「森林総研」と略します)が微粉砕技術を用いて2018年に世界で初めて開発しました。大阪万博にはその技術を実用化した企業が、ミズナラ、クロモジ、スギ、ヤマザクラを原料とするお酒の香りを体験できるコーナーを用意し、来場者が香りの違いを楽しんだそうです(参考文献1、2)。
■「木のお酒」が造れるようになったわけ
木材は分解しにくいリグニンが硬い細胞壁を形成しています。細胞壁の厚さは一般的に2〜4 μmと薄く、この薄い細胞壁構造が密集して硬い木材を作り出しています。森林総研は細胞壁を砕く前処理技術「湿式ミリング処理」を開発しました。この技術により1μm以下にまで木材を微粉砕することが可能になり、細胞壁の中にあるセルロースの大部分を露出させ、市販の酵素によりブドウ糖に分解させ、そのブドウ糖を酵母によりアルコール発酵させるそうです(参考文献3)。
■木とお酒の関係
木とお酒はいろいろと結びつきがあります。ウイスキーでは樽に使用される木材がその深い味わいや個性をもたらします。身近な果実酒では様々な木の実の違いを楽しめます。ここに新たに「木のお酒」が加わる可能性があるということです。木のもつ個性を、いろいろなお酒を介して身近に感じらえるようになると良いと思います。
■まとめ
森林総研によりますと、「木のお酒」は、想像よりもたくさんできるそうです。また、樹種ごとに異なる風味が醸し出され、飲む人に新しい体験を与え、地域ごとのストーリー展開も期待できるとアピールしています(参考文献3)。森林資源の利活用に新しい分野が登場すると良いですね。
参考文献1:日本農業新聞「世界初「木の酒」万博に登場(2025/9/6)」(2025年9月14日閲覧)
https://www.agrinews.co.jp/society/index/330462
参考文献2:ヤフーニュース「屋スギやミズナラの「酒」はどんな香り? 大阪・関西万博で「木の酒」の展示(2025/9/8)」(2025年9月13日閲覧)
https://news.yahoo.co.jp/articles/79c830e9c29a0988d266b557249fa51c10046cbd
参考文献3:国立研究開発法人森林・整備機構、森林総合研究所「世界初、木から造る新しいお酒」 (2025年9月14日閲覧)
https://www.ffpri.go.jp/labs/kinosake/index.html
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