今月は環境省と農林水産省が発行する生態系被害防止外来種リストのネコの記載名称に関するニュース記事から、野生化したネコの生態系影響について考えてみたいと思います。
■ネコの呼び方と生態系への影響について
私たちは、ネコというと、野良猫や飼っているネコをイメージすると思いますが、それらのネコは種としては同じイエネコになります。イエネコは6世紀ころにギリシャから日本に持ち込まれたとされ、人間社会の依存度や生息場所によって、飼い猫・野良猫・ノネコという3つの状態が連続しています(参考文献1)。生態系に影響を与えるイエネコは野生化したといえる「ノネコ」と、自然界での活動がノネコと同じ「野良猫」です。生態系への影響としては、アマミノクロウサギやヤンバルクイナなどの希少種の捕食、海鳥の巣に侵入し卵やヒナを食べる繁殖への影響、ツシマヤマネコやイリオモテヤマネコなどの野生のヤマネコとのエサの奪い合い・なわばり争い・感染症誘発、などがあげられます(参考文献2)。
■生態系防止外来種リストのネコの記載名称見直しについて
生態系防止外来種リストは今年、10年ぶりに改定される予定で、動植物合わせて596種が掲載される見込みです。同リストに法的拘束力はないものの、国や自治体の外来種対策に活用されます。ネコの掲載名は現在「ノネコ(イエネコの野生化したもの)」なのですが、「野良猫」も含む種名のイエネコに変更する案が議論されました。様々な意見が出され、最終原稿案は現状維持のノネコになったそうです(参考文献3)。
■対策には多くの関係者の理解と協力が不可欠
ノネコの問題に対し、奄美大嶋では国がノネコの管理計画を立て、個体数の管理、発生源対策、地域住民への理解などを進めています。(参考文献4)。イエネコは繁殖力が高いため、不妊去勢手術など、「飼い猫」の状態での地域住民の協力が欠かせません。また、捕獲した「ノネコ」を「飼い猫」に戻すという取り組みが様々な団体の協力のもと、進められています。イエネコは人間社会への依存度が多様であるため、問題の解決には、地域住民、生態系の専門家、ネコを扱うペット業者など、多くの関係者の理解と協力が不可欠です。今回、生態系防止外来種リストの記載名としての「イエネコ」に対しては、立場の違いによる反対意見がありました。多くの関係者が存在する状況での合意の難しさが表れたと思います。
■まとめ
検索したところ20年近く前の小笠原諸島で「ノネコ」を捕獲して「飼い猫」に戻す取り組みの記事がありました(参考文献5)。昔から対策がなされていますが、生態系の維持改善はその効果が表れるまで時間がかかります。また、希少種が維持されている場合はニュースにならず、現場での様々な方の努力が表に現れてきません。身近な存在であるネコの名称に関するニュース記事から、少しでも多くの方が生態系保全へ関心をもっていただけると良いと思います。
参考文献1:長嶺隆「沖縄島北部やんばる地域におけるイエネコによる固有鳥類の捕食
被害とその対策」日本鳥学会誌69(1): 31–40 (2020) (2026年8月14日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo/69/1/69_31/_pdf
参考文献2:環境省ホームページ「希少種とノネコ・ノラネコ」 (2026年8月14日閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/kisho/noneko.html
参考文献3:八重山毎日新聞「「ノネコ」に逆戻り(2026/8/8)」(2026年8月14日閲覧)
https://www.y-mainichi.co.jp/news/42710
参考文献4:沖縄奄美自然環境事務所「「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」ロードマップの進捗評価について(お知らせ)(2026/6/22)」 (2026年8月15日閲覧)
https://kyushu.env.go.jp/okinawa/press_00148.html
参考文献5:環境省アクティブレンジャー日記「小笠原のネコ」(2007/7/18)」 (2026年7月14日閲覧)
https://kanto.env.go.jp/blog/ogasawara/a-ogasawara/index_26.html
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