今月は先月に続いて木の利用に関する記事です。木造高層ビル計画の話題ですが、今回は少し視点を変え、四季を感じる素材という視点で考えてみたいと思います。
■日本初の70階建て木造建築計画
住友林業が70階建てで高さ350メートルの木造建築の計画を発表しました。一部に鉄骨を使うそうですが、7階建て以上の木造建築の計画は日本初です。芯まで燃えないような3時間耐火の認定取得に向けた研究や、火災対策としての植栽などの検討も進めるとのこのです(参考文献1)。
■今回は視点を変えて
このコーナーでは既に、伝統的木造建築技術の高さや継承の必要性などについて、名古屋城やガソリンスタンドを例に取り上げました(2017年7月、2017年11月)。公共建築物への木材利用についても「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と駅舎などの例を紹介し、資源循環にも触れました(2017年1月)。そこで、今回は自然界で生きてきた材という視点で考えてみたいと思います。
■春の訪れを告げる根開き
この冬は全国で多くの雪が降りました。雪が積もった林では春になると幹の周りだけ雪が溶けだす「雪根開き(ゆきねびらき)」や「根開き(ねあき)」と呼ばれる現象が見られます。これは、幹が周りの雪よりも太陽エネルギーを吸収しやすいことと、春になり水分の吸い上げが活発になることによると考えられています。特に春の活動の活性化は顕著で、例えば、キシリトールで知られる白樺の樹液も雪解けの季節に行われます。
四季がはっきりしている日本では、無垢の木を使った比較的新しい家では季節の変化の影響を受けます。春になり暖かくなると梁からヤニがたれてきたり、板と板の隙間が狭くなる、などの変化が見られます。大工さんは対策として材を十分乾燥させ狂いが出ないように工夫をするのですが、毎年生じる材の変化も楽しめる工夫があると良いかもしれませんね。ちなみに、木材は吸湿しますので、結露の心配も少ないです。
■まとめ
今回は木造建築における無垢材の四季の変化について少し触れて見ました。この様な特性は鉄骨などとは大きく異なるところです。今回の高層ビルへの適用計画では防火対策が重要な開発アイテムになっていますが、木の良い特性は損なわないような工夫をし、四季も感じることができるとよいと思います。
参考文献1:日本経済新聞ホームページ「住友林業、70階建て「木造」ビル構想 東京・丸の内での建設を想定 2018年2月8日」(2018年2月17日閲覧)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26693880Y8A200C1TJ1000/
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