今月はフィンランドの事例から日本でも取り組みが進む木材利用について、改めて考えてみたいと思います。
■日本における木材利用の取り組み
このコーナーではこれまで、東京五輪での国産材利用(2019年5月、2018年7月)、木造高層建築(2018年3月)、木造ガソリンスタンド(2017年11月)、木製ガードレール(2017年9月)など、木材利用の取り組みを多く紹介してきました。日本では2010年の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」施行後(参考文献1)、耐火性や強度などの特性向上など技術的進歩もあって、国産材の利用が増えつつあります。
■フィンランドのWOOD CITY
フィンランドでも日本同様に国が後押しする仕組みがあり、建築以外の土木など広い領域での木材利用、法令などのタイムリーな更新、国際協調やノウハウ輸出などを推進しています。また、街全体を木造・木質化するWOOD CITY計画では、伐採から製材・販売までを一貫して民間企業が取組み、2025年からは建築確認申請時に50年の耐用年数を想定したLCA(ライフサイクルアセスメント)を義務付けるそうです(参考文献2)。
■LCAに基づく国際的な情報発信の可能性
日本の木材を使う技術は法隆寺などの現存する古い木造建築が物語るように世界屈指と言えます。また、生活に身近な家具や雑貨など木材を利用するノウハウも多く、最新の技術と組み合わせると、いろいろな可能性を持っています。一方、フィンランドの事例に見られるLCAは環境影響をライフサイクルで分析する国際的な手法で、評価領域は温暖化、資源枯渇、人間健康、生物多様性などの多岐にわたります(参考文献3)。従い、ライフサイクルの評価シナリオを工夫することで、鉄筋コンクリートと木材の比較、輸入材と国産材の比較など様々な視点で環境影響を世界共通の物差しで発信することができます。
■まとめ
今回はフンランドの事例から木材利用の環境影響評価としてLCAの可能性を紹介しました。LCAには森林の一次生産性(植物の成長量)や生物多様性などを評価できる手法もあり、伐採した後の森林の健全性や、廃棄後に木材が土に帰ることの良さなども分析できます。このように多様な視点からの分析と議論が国際的に盛んになると良いと思います。
参考文献1:林野庁ホームページ「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(2021年3月19日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/
参考文献2:日経TECH「森林大国フィンランドで進む「木造街区」(2021/3/18)」(2021年3月18日閲覧)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00461/030900038/
参考文献3:経済産業省ホームページ「ライフサイクルアセスメント」(2021年3月19日閲覧)
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/3r_policy/policy/pdf/text_2_3_a.pdf
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