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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2024年10月 奄美黄島のマングースから外来種問題を改めて考える

今月は奄美大島のマングース根絶のニュースから外来種問題を改めて考えてみたいと思います。

■奄美大島のマングース
世界自然遺産に登録されている奄美大島で、特定外来生物マングースの根絶が宣言されました。マングースは45年前にハブを減らすため奄美大島に持ち込まれましたが、アマミノクロウサギなどの希少な野生動物が襲われる被害が相次ぎ、環境省が2005年に特定外来生物に指定し、駆除を進めてきました。今回のような広範囲でのマングースの根絶は世界的にも珍しく、定点カメラのモニタリングは継続するそうです(参考文献1)。マングースが持ち込まれた経緯や農作物や生態系への影響やその対応については農林水産省のホームページ(参考文献2)に詳しく掲載されていますので、ここでは割愛します。

■外来種問題への対応
伊藤環境大臣(9月時点)が記者会見で呼びかけている通り、外来種の被害予防3原則「入れない、捨てない、広げない」が大切です(参考文献1)。また、これまでもこのコーナーで外来種問題については、モウソウチクとマダケ(2024年5月)、ヒアリ、アメリカザリガニ、アカミミガメ(2022年4月)、アライグマ(2018年11月)、ヌートリア(2017年6月)などを取り上げ、種の保存における遺伝子レベルへの配慮、海外に迷惑をかけている日本固有種の問題などにもふれました。

■複雑な生物多様性の問題
マングースのように昔に「よかれ」と思って人の手で日本に持ち込まれた外来種が問題を引き起こす例は他にもあります。樹木になりますが、街路樹、砂防林、肥料木などとして持ち込まれたニセアカシア(ハリエンジュ)もその一つです。ニセアカシアは河川域などを中心に全国で見られ、ハチミツの供給源になるなど(参考文献3)、地域の経済活動とも関りがあり、駆除にあたっては地元の方々の理解も大切です。また、ニセアカシアのように植生において優占種となる外来植物は、食物連鎖、腐食連鎖を変化させ、動物の生息場所の構造や機能も変え、生物多様性に甚大な影響を及ぼすとされています(参考文献4)。ニセアカシアが日本の海岸林の代表樹種であるクロマツに影響を与えるという報告もあります(参考文献5)。外来種の問題は生態系全体に影響を与えまる複雑な問題であると改めて感じました。

■まとめ
今月はマングース根絶のニュースを起点にニセアカシアの例を紹介し、外来種対策における地域の方々の理解の大切さや生態系全体への影響について触れました。外来種の問題は身近にありながら生態系全体に広く影響します。今一度、「入れない、捨てない、広げない」の基本に立ち返ることも必要ですね。


参考文献1:NHK NEWS WEB「鹿児島 奄美大島 “マングース根絶した”宣言 環境省(2024/9/3)」(2024年9月14日閲覧)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240817/2000086819.html

参考文献2:農林水産省鳥獣被害対策コーナー「マングース」(2024年9月14日閲覧)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/old_manual/manual_tokutei_gairai_old/data7.pdf

参考文献3:国立環境研究所侵入生物データベース「ハリエンジュ」(2024年9月14日閲覧)
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80150.html

参考文献4:鷲谷いづみ「日本の河川における外来種問題とその管理の課題:植物に焦点をあてて」リバーフロント研究所RIVER FRONT Vol.78, (2014)(2024年9月14日閲覧)
https://www.rfc.or.jp/pdf/vol_78/p006.pdf

参考文献5:谷口武士「外来植物ニセアカシアによる富栄養化がクロマツの外生菌根共生に与える影」, 京都大学(2024年9月14日閲覧)
http://cse.ffpri.affrc.go.jp/akema/public/interaction/13/Taniguchi.pdf



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